役職定年で収入と仕事はどう変わるか。制度の解説ではなく「当事者に起きること」だけをまとめる

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役職定年について検索すると、出てくるのは人事部向けの制度解説がほとんどです。 「役職定年とは何か」「企業が導入するメリット・デメリット」——読者として想定されているのは、制度を運用する側です。
この記事は逆です。 役職定年を「される側」の50代会社員に、何が起きるのかだけを書きます。
私自身、役職定年を経験した59歳の会社員です。 他人事ではないので、調べた数字と自分の実測を全部ここに残します。
役職定年とは(30秒だけ制度の話)
役職定年は、一定の年齢(55歳前後が多い)に達すると、部長・課長などの役職から外れる制度です。 雇用は続きます。退職ではありません。
制度の詳細を知りたい方は人事系サイトに譲ります。 ここから先は「で、自分はどうなるのか」だけです。
収入はいくら減るのか
まず世の中の数字です。
- 役職定年制を導入している企業は、人事院の調査(令和5年・民間企業の勤務条件制度等調査)で16.7%。 ただし会社の規模で大きく変わり、従業員500人以上では27.6%、50〜100人では10.7%です。 大企業ほど「ある」制度です
- ダイヤモンド編集部の独自調査(2022年・週刊ダイヤモンド)では、従業員3001人以上の企業の75%が導入。 そして役職定年を経験した人の53%が「年収が1〜3割減った」と回答し、 9割以上が年収ダウンを経験しています
「収入3割減」という表現が検索上位に並びますが、減少幅は役職手当の比重と会社の制度設計で大きく変わります。 平均値はあなたの数字ではありません。
自分の場合を知るには、この3つを並べるだけで概算できます。
- 現在の年収の内訳(基本給/役職手当/賞与の算定基準)
- 就業規則・賃金規程の「役職定年」「ポストオフ」条項
- 減るのは何か(役職手当だけか、基本給の等級も下がるか、賞与係数はどうか)
私は3年前、課長職の役職定年を迎えました。 その前はYouTubeや書籍で「役職定年で給料が下がる」という話をさんざん見て、身構えていました。 結論から言うと——私の場合、給料は下がりませんでした。 年下の上司との査定面談で、拍子抜けしたのを覚えています。 先ほどの統計で9割以上が年収ダウンする中の、"減らなかった側"です。 だからこそ、平均値ではなく「自分の場合」を確かめる方法に価値があると思い、調べたことと経験をここに残します。
見落としやすいのがここです。
- 社会保険料は、給与が下がってもすぐには下がりません。 保険料の基準(標準報酬月額)の見直し=随時改定は、「固定的賃金が変わった月から3ヶ月間の平均」で判定され、2等級以上の差があるときに4ヶ月目から改定されます。 つまり減収後の約3ヶ月は、高いままの保険料を、下がった給与から払います
- 住民税は前年の所得への課税なので、減収1年目は「去年の年収に対する税金」を「今年の収入」から払います
つまり、額面の減少幅よりも、1年目の手取りの体感はさらに重い。 ここを知らずに家計を組むと、最初の1年でつまずきます。
仕事と立場はどう変わるか——「その後」の4パターン
経験者の記録や調査を読むと、役職定年後の道はおおむね4つに分かれます。
| パターン | 中身 | 起きやすいこと |
|---|---|---|
| 同じ部署で専門職に | 肩書が「担当部長」「専任」等に変わる | 元部下との関係が最大の難所 |
| 別部署へ異動 | 経験を別の場所で使う | 仕事の再学習が必要 |
| 転職 | 社外に出る | 50代の転職市場は狭い(別記事で詳述) |
| 独立・副業 | 雇われない働き方へ | 準備期間がないと苦しい |
どのパターンでも共通するのは、「会社が次を用意してくれる」前提が消えることです。
「先にやっておく」3つ——減った人も、減らなかった私も、結論は同じ
私の給料は減りませんでした。 それでも、「先にやっておけばよかった」と思うことははっきりあります。 結果がどちらに転んでも効く準備は、この3つです。
1. 賃金規程を読んで、自分の減収額を試算しておく
私は、自分がどちら側か分からないまま査定面談を迎えました。 順番が逆でした。 「役職定年」「ポストオフ」の条項を読み、前の章の3点で試算すれば、面談の前に答え合わせができます。 不安の大半は、金額が分からないことから来ます。
2. 家計の固定費の見直しは「減る前」にやる
家計の固定費でいちばん大きいのは、住宅費と保険料です。 収入が減ってから慌てて見直すより、減る前の年収があるうちに見直すほうが選択肢が多い——これは保険や住宅ローンの構造上そうなります。私のように減らなかった場合でも、この見直しは無駄になりません。 数年後には、役職定年よりも大きな変化——定年本体——が控えているからです。
3. 社外で通用するスキルの棚卸し
給料が変わらなくても、肩書は外れ、上司は年下になります。 役割と立場は確実に変わります。 「会社の中の自分」とは別の物差しを持っておくことが、次の段階(定年・再雇用・独立)の選択肢を増やします。 棚卸しのやり方は次の記事で詳しく書きます。
固定費の見直しを「自分でやる」のが面倒な場合
さきほどの2つ目——固定費の見直し——で最初に当たる壁は、自分の保険証券を 読み解くところです。私はここを後回しにしたまま査定面談を迎えました。 順番が逆でした。
自分で読むのが億劫なら、ファイナンシャルプランナーの無料相談という手もあります。 「役職定年で年収が◯円減ったら、うちの家計はどうなるか」——この試算を そのまま持ち込めるので、面談の前に数字がひとつ増えます。
なお、私はこのサービスを使っていません。使っていないものを「使った」とは 書けないので、ここは「こういう手段がある」という紹介にとどめます。 相談したうえで何も変えない、という結論でも構いません。目的は数字を出すことです。※リンク先は、保険の見直しを中心にした無料相談です(1〜2時間の面談があります)。
まとめ
- 役職定年で9割以上が年収ダウン。ただし私のように減らない例も現実にある。 どちら側かは、あなたの会社の規程だけが知っている
- 減少幅の平均値より、自分の賃金規程で試算した数字が正
- 手取りには時差がある。1年目がいちばん重い
- 「その後」は4パターン。どれでも共通して、次は自分で用意する
次の記事では、収入よりも先に来る問題——モチベーションの落ち込み——を扱います。 役職定年でやる気が出ないのは、あなたの弱さではない
また、その規程の中身を会社に聞くときの質問は、こちらにまとめました。 定年前に会社へ聞くこと7つ。再雇用が決まっても、賃金額はまだ教えてもらえません
この記事で使った数字の出典
- 人事院「令和5年 民間企業の勤務条件制度等調査」(役職定年制の導入割合 16.7%・規模別内訳)
- ダイヤモンド編集部 独自調査(週刊ダイヤモンド 2022年10月8日・15日合併号「役職定年の悲哀」特集。年収1〜3割減が53%・9割以上が年収減、3001人以上企業の75%が導入)
- 日本年金機構「随時改定(月額変更届)」(固定的賃金の変動月から3ヶ月平均・2等級以上差で4ヶ月目改定)