役職定年の実測ノート

役職定年で何が起きるかを、実測の数字と当事者の一次情報で。

役職定年で収入と仕事はどう変わるか。制度の解説ではなく「当事者に起きること」だけをまとめる

役職定年がある会社の割合は全体で16.7%、従業員3001人以上では75%。平均値は自分の数字ではない

※本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。

役職定年について検索すると、出てくるのは人事部向けの制度解説がほとんどです。 「役職定年とは何か」「企業が導入するメリット・デメリット」——読者として想定されているのは、制度を運用する側です。

この記事は逆です。 役職定年を「される側」の50代会社員に、何が起きるのかだけを書きます。

私自身、役職定年を経験した59歳の会社員です。 他人事ではないので、調べた数字と自分の実測を全部ここに残します。

役職定年とは(30秒だけ制度の話)

役職定年は、一定の年齢(55歳前後が多い)に達すると、部長・課長などの役職から外れる制度です。 雇用は続きます。退職ではありません。

制度の詳細を知りたい方は人事系サイトに譲ります。 ここから先は「で、自分はどうなるのか」だけです。

収入はいくら減るのか

まず世の中の数字です。

  • 役職定年制を導入している企業は、人事院の調査(令和5年・民間企業の勤務条件制度等調査)で16.7%。 ただし会社の規模で大きく変わり、従業員500人以上では27.6%、50〜100人では10.7%です。 大企業ほど「ある」制度です
  • ダイヤモンド編集部の独自調査(2022年・週刊ダイヤモンド)では、従業員3001人以上の企業の75%が導入。 そして役職定年を経験した人の53%が「年収が1〜3割減った」と回答し、 9割以上が年収ダウンを経験しています

「収入3割減」という表現が検索上位に並びますが、減少幅は役職手当の比重と会社の制度設計で大きく変わります。 平均値はあなたの数字ではありません。

自分の場合を知るには、この3つを並べるだけで概算できます。

  1. 現在の年収の内訳(基本給/役職手当/賞与の算定基準)
  2. 就業規則・賃金規程の「役職定年」「ポストオフ」条項
  3. 減るのは何か(役職手当だけか、基本給の等級も下がるか、賞与係数はどうか)

私は3年前、課長職の役職定年を迎えました。 その前はYouTubeや書籍で「役職定年で給料が下がる」という話をさんざん見て、身構えていました。 結論から言うと——私の場合、給料は下がりませんでした。 年下の上司との査定面談で、拍子抜けしたのを覚えています。 先ほどの統計で9割以上が年収ダウンする中の、"減らなかった側"です。 だからこそ、平均値ではなく「自分の場合」を確かめる方法に価値があると思い、調べたことと経験をここに残します。

見落としやすいのがここです。

  • 社会保険料は、給与が下がってもすぐには下がりません。 保険料の基準(標準報酬月額)の見直し=随時改定は、「固定的賃金が変わった月から3ヶ月間の平均」で判定され、2等級以上の差があるときに4ヶ月目から改定されます。 つまり減収後の約3ヶ月は、高いままの保険料を、下がった給与から払います
  • 住民税は前年の所得への課税なので、減収1年目は「去年の年収に対する税金」を「今年の収入」から払います

つまり、額面の減少幅よりも、1年目の手取りの体感はさらに重い。 ここを知らずに家計を組むと、最初の1年でつまずきます。

仕事と立場はどう変わるか——「その後」の4パターン

経験者の記録や調査を読むと、役職定年後の道はおおむね4つに分かれます。

パターン 中身 起きやすいこと
同じ部署で専門職に 肩書が「担当部長」「専任」等に変わる 元部下との関係が最大の難所
別部署へ異動 経験を別の場所で使う 仕事の再学習が必要
転職 社外に出る 50代の転職市場は狭い(別記事で詳述)
独立・副業 雇われない働き方へ 準備期間がないと苦しい

どのパターンでも共通するのは、「会社が次を用意してくれる」前提が消えることです。

「先にやっておく」3つ——減った人も、減らなかった私も、結論は同じ

私の給料は減りませんでした。 それでも、「先にやっておけばよかった」と思うことははっきりあります。 結果がどちらに転んでも効く準備は、この3つです。

1. 賃金規程を読んで、自分の減収額を試算しておく

私は、自分がどちら側か分からないまま査定面談を迎えました。 順番が逆でした。 「役職定年」「ポストオフ」の条項を読み、前の章の3点で試算すれば、面談の前に答え合わせができます。 不安の大半は、金額が分からないことから来ます。

2. 家計の固定費の見直しは「減る前」にやる

家計の固定費でいちばん大きいのは、住宅費と保険料です。 収入が減ってから慌てて見直すより、減る前の年収があるうちに見直すほうが選択肢が多い——これは保険や住宅ローンの構造上そうなります。私のように減らなかった場合でも、この見直しは無駄になりません。 数年後には、役職定年よりも大きな変化——定年本体——が控えているからです。

3. 社外で通用するスキルの棚卸し

給料が変わらなくても、肩書は外れ、上司は年下になります。 役割と立場は確実に変わります。 「会社の中の自分」とは別の物差しを持っておくことが、次の段階(定年・再雇用・独立)の選択肢を増やします。 棚卸しのやり方は次の記事で詳しく書きます。

固定費の見直しを「自分でやる」のが面倒な場合

さきほどの2つ目——固定費の見直し——で最初に当たる壁は、自分の保険証券を 読み解くところです。私はここを後回しにしたまま査定面談を迎えました。 順番が逆でした。

自分で読むのが億劫なら、ファイナンシャルプランナーの無料相談という手もあります。 「役職定年で年収が◯円減ったら、うちの家計はどうなるか」——この試算を そのまま持ち込めるので、面談の前に数字がひとつ増えます。

なお、私はこのサービスを使っていません。使っていないものを「使った」とは 書けないので、ここは「こういう手段がある」という紹介にとどめます。 相談したうえで何も変えない、という結論でも構いません。目的は数字を出すことです。※リンク先は、保険の見直しを中心にした無料相談です(1〜2時間の面談があります)。

→ ファイナンシャルプランナーの無料相談はこちら(PR)

まとめ

  • 役職定年で9割以上が年収ダウン。ただし私のように減らない例も現実にある。   どちら側かは、あなたの会社の規程だけが知っている
  • 減少幅の平均値より、自分の賃金規程で試算した数字が正
  • 手取りには時差がある。1年目がいちばん重い
  • 「その後」は4パターン。どれでも共通して、次は自分で用意する

次の記事では、収入よりも先に来る問題——モチベーションの落ち込み——を扱います。 役職定年でやる気が出ないのは、あなたの弱さではない

また、その規程の中身を会社に聞くときの質問は、こちらにまとめました。 定年前に会社へ聞くこと7つ。再雇用が決まっても、賃金額はまだ教えてもらえません


この記事で使った数字の出典

  • 人事院「令和5年 民間企業の勤務条件制度等調査」(役職定年制の導入割合 16.7%・規模別内訳)
  • ダイヤモンド編集部 独自調査(週刊ダイヤモンド 2022年10月8日・15日合併号「役職定年の悲哀」特集。年収1〜3割減が53%・9割以上が年収減、3001人以上企業の75%が導入)
  • 日本年金機構「随時改定(月額変更届)」(固定的賃金の変動月から3ヶ月平均・2等級以上差で4ヶ月目改定)