再雇用で仕事内容は変えてもらえる? 条件は「話し合って決める」もの。契約書の「業務の変更の範囲」と、断られたときの線を国の資料で確かめました

私は2027年2月に60歳で定年を迎えます。定年のあとは、同じ会社に再雇用で残ることが決まっています。
再雇用の話し合いで、1つ頼もうと思っていることがあります。配車の責任を外して、内勤に移してほしい、というお願いです。給料が下がるのは受け止めるつもりです。そのかわり、いちばん負担の重い配車の責任だけは外して、長く続けられる形にしたい。
ただ、頼む前に分からないことが2つありました。そもそも、こちらから仕事の中身の希望を出してよいのか。そして、通らなかったら何が起きるのか。国の資料だけを開いて確かめました。
給料は下がるのに、仕事の中身は変わらない・増えた、という声が多い
調べる前に、再雇用で働いている人の声を読みました。いちばん多かったのは、この形です。
- 給料は減ったのに、休んだ人の仕事が回ってきて、仕事が倍になった
- 責任者が急にいなくなり、その仕事を非常勤のまま引き継いでいる
- 案件は増えているのに、提示された金額は6割ほどだった
- 給与の形は変わったのに、働く時間は正社員のときとまったく同じ
共通しているのは、「給料は会社が決めて下げるのに、仕事の中身はこちらから何も言えないのか」という困りごとです。
給料の差について会社に説明を求める話は、再雇用で給料は下がるのに仕事は同じ。会社に説明を求められますに書きました。この記事はその逆向きで、仕事の中身を自分から決めに行く話です。
再雇用の条件は「会社が一方的に決める物」ではない
厚生労働省の「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」のA1-4は、継続雇用のあとの労働条件について、雇用に関する法令を守ったうえで、こう書いています。
フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関して、事業主と労働者の間で十分に話し合い決めることが重要です。
会社が決めて渡す物、とは書かれていません。話し合って決める物、です。
ひとつ正直に書いておきます。この答えに並んでいるのは「労働時間、賃金、待遇」で、「担当」や「仕事の中身」という言葉そのものは出てきません。最後に「など」が付いています。担当の希望もこの話し合いの中で出してよい物だ、と私は読みましたが、これは私の読み方です。
もう1つ。同じQ&AのA1-1は、継続雇用制度は希望者全員を対象にしなければならないとしています。継続雇用しないことができるのは、心身の故障で業務に堪えられない、勤務状況が著しく悪い、といった就業規則に定める解雇・退職の事由(年齢に係るものを除く)に当たる場合です。
ただし、希望どおりにする義務は会社にない
ここからが、もう一方の答えです。同じQ&AのA1-7はこう書いています。
事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではなく、
続けて、会社が自社の状況をふまえて「合理的な裁量の範囲」の条件を出した場合、条件で合意できず、結果として本人が継続雇用を断ったとしても、高年齢者雇用安定法の違反にはならない、としています。
つまり、資料の答えは2つで1組です。
| 資料が言っていること | 出どころ |
|---|---|
| 労働時間・賃金・待遇などは、会社と本人が十分に話し合って決めることが重要 | A1-4・A1-7 |
| 会社に、本人の希望どおりの条件で雇う義務はない | A1-7 |
「頼めば通る」でも、「頼んでも無駄」でもありません。頼んでよい。ただし、通る保証はない。私はこの2つを同じ重さで受け取りました。
では、何が「合理的な裁量の範囲」なのか。Q&Aには、担当や仕事の中身について、具体的な線や例は書かれていませんでした。ここは埋めずに、分からないままにしておきます。迷ったときの相談先として、厚生労働省のリーフレットは、労働条件の明示や労働契約の民事上のもめごとについて都道府県労働局と労働基準監督署を挙げています。
契約書で見る1行:「業務の変更の範囲」
話し合いの結果は、どこで確かめるのか。厚生労働省のリーフレット「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」に答えがありました。
- 2024年4月から、全ての労働契約を結ぶときと、有期労働契約(期間の決まった契約)を更新するたびに、働き始めてすぐの就業場所・業務の内容に加えて、その「変更の範囲」も書いて示すことが必要になった
- 「変更の範囲」とは、将来の配置転換などによって変わりうる就業場所・業務の範囲のこと
- 有期労働契約では、更新の上限(通算の契約期間や更新回数の上限)があるかどうかと、その中身も示す
再雇用が1年ごとなどの有期契約なら、更新のたびに、業務の内容と変更の範囲が明示されることになります。
私が見るのは、この2つです。
- 業務の内容の欄に、外してほしいと頼んだ担当が入っていないか
- 変更の範囲の欄に、何が書かれているか。ここが広ければ、将来その範囲の中で担当が変わりうる、ということです
仕事の中身が変われば、給料の差の見え方も変わる
A1-4には続きがあります。定年後に継続雇用された有期雇用の人も、「同一労働同一賃金ガイドライン」の対象です。そのうえで、
- 正社員との間に、職務の内容や、職務の内容・配置の変更の範囲などに実際の違いがあれば、その違いに応じた賃金の差は認められる
- ただし、定年後に継続雇用された人だから、というだけで、ただちに待遇の差が不合理でないと認められるわけではない
とされています。
ここから考えると、担当を軽くしてもらえば、給料の差には「仕事が違うから」という説明がつきやすくなります。これは会社にとっての話でもあります。担当を外してもらった結果、時給がさらに下がるかもしれません(これは私の推測です。資料に書いてあるのは「違いに応じた差は認められる」というところまでです)。
給料が下がった場合に関係するのが、雇用保険の高年齢雇用継続給付です。ハローワークのページによると、
- 雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の人で、60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満に下がった状態で働き続ける場合に支給される
- 各月の賃金が60歳時点の64%以下なら、各月の賃金の10%相当額(64%超75%未満なら、下がり方に応じて10%未満の額)
- 各月の賃金が397,369円を超えると支給されない(この額は毎年8月1日に変わる)
- 令和7年(2025年)3月31日以前に60歳になった人は、扱いが別
担当を変えて給料が下がっても、下がり方によってはこの給付で一部が戻ります。
私が頼む順番と、まだ分からないこと
話し合いでは、希望を1つだけ出すのではなく、順番をつけて出すつもりです。
- 第一希望:配車の責任を外れて、内勤に移る
- 第二希望:外れないなら、負担が重くなりやすい時期だけでも外す
- 第三希望:それも難しいなら、自分ひとりではどうにもならない場面で、最後に決めるのは誰かを決めて、書いてもらう
あわせて、出勤の日はこれまでどおり引き受けると先に伝えます。会社にとっても、人手が減るだけの話にはしたくないからです。
そのうえで、まだ分からないことが3つあります。
- 今の会社に、配車をしない内勤の担当がどれだけあるか。まだ確かめていません
- 担当を変えたら、時給がどうなるか。再雇用の条件はまだ示されていません
- 何が「合理的な裁量の範囲」なのか。資料に線が無いので、話し合いの場で確かめるしかありません
そして、いちばん大きいのは家計です。担当を変えれば、時給が下がるかもしれない。「下がってでも負担を外すか」は、家計の見通しが無いと決められません。ここは国の資料では埋まりませんでした。
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まとめ
- 継続雇用のあとの労働時間・賃金・待遇などは、会社と本人が十分に話し合って決めることが重要(高年齢者雇用安定法Q&A A1-4)
- ただし、本人の希望どおりの条件で雇う義務は会社にない。合理的な裁量の範囲の条件で合意できず、本人が断っても法違反ではない(同 A1-7)。担当や仕事の中身について、何が合理的かの例はQ&Aに無い
- 継続雇用制度は希望者全員が対象(同 A1-1。就業規則の解雇・退職事由=年齢以外に当たる場合を除く)
- 2024年4月から、契約を結ぶときと有期契約を更新するたびに、業務の内容と「業務の変更の範囲」が明示される
- 職務の内容などに違いがあれば、その違いに応じた賃金の差は認められる。継続雇用だから、というだけでは認められない(A1-4)
- 給料が60歳時点の75%未満に下がれば高年齢雇用継続給付の対象。64%以下なら賃金の10%
この記事で使った資料
- 厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」(A1-1・A1-4・A1-7) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/newpage_55003.html
- 厚生労働省 リーフレット「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001298245.pdf
- ハローワーク インターネットサービス「雇用継続給付」(高年齢雇用継続給付について) https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_continue.html
決まりと数字は、すべてこの3つの資料から引きました。個人の解説記事・動画・ニュースは、論点を探すためだけに使い、根拠にはしていません。