役職定年の実測ノート

役職定年で何が起きるかを、実測の数字と当事者の一次情報で。

定年で会社の団体保険が切れたら、何に入り直す? 先に国の保障で残るもの(高額療養費・傷病手当金・遺族年金)を国の資料で確かめました

会社の団体保険が切れる前に、国の保障。高額療養費・傷病手当金・遺族年金で残るもの

私は2027年2月に60歳で定年を迎えます。定年のあとは、同じ会社に再雇用で残ることが決まっています。

定年が近づいて、気になり始めたことがあります。会社を通して入っている保険は、辞めたらどうなるのか。会社によっては、社員向けの生命保険や医療保険(団体保険)があり、給料から保険料が引かれています。辞めたら切れるのか、続けられるのか。切れたら、民間の保険に入り直すべきなのか。

調べる前に、順番を1つ決めました。民間の保険を探す前に、国の保障で何が残るかを先に確かめる。この記事は、その確かめた結果です。

会社経由の保険は、辞めたら切れるかもしれない。私はまだ中身を知りません

最初に正直に書いておきます。私は、自分の会社に団体保険があるのか、退職後や再雇用後も続けられるのかを、まだ確かめていません。「定年前に会社へ聞くこと」の1つに足しました。

団体保険の中身(保険料・何が出るか・辞めた後も続けられるか)は、会社ごとに違います。国の資料には載っていません。だから、ここは会社に聞くしかありません。

一方で、病気・けが・死亡のときに国の制度から何が出るかは、公開されている同じ資料で確かめられます。

なお、退職後にどの健康保険に入るか(任意継続か、国民健康保険か)で、このあと出てくる傷病手当金の扱いが変わります。保険料の比べ方は退職後の健康保険は任意継続と国民健康保険のどっちが得かにまとめました。この記事は保険料の話ではなく、「何かあったときに何が出るか」の話です。

民間に入り直す前に、国の保障で何が残るかを先に見る

考え方の順番はこうです。

  1. 会社の団体保険が、いつ・何が切れるかを会社に聞く
  2. 国の制度で、病気・けが・死亡のときに何が出るかを確かめる
  3. 1で切れるもののうち、2で埋まらない差だけを、民間で埋めるかどうか考える

3から始めると、国の制度ですでに出るものにまで、保険料を払うことになりかねません。だから2を先に確かめます。見たのは次の3つです。

何かあったとき 国の制度 出どころ
病気・けがで医療費が高くなった 高額療養費 厚生労働省
病気・けがで仕事を休んだ 傷病手当金 協会けんぽ
亡くなった 遺族厚生年金・埋葬料 日本年金機構・協会けんぽ

病気・けが①:医療費には高額療養費で上限がある。2026年8月から「年間上限」もできた

高額療養費は、医療機関や薬局の窓口で払った医療費が上限額を超えたとき、超えた分が支給される制度です。上限額は年齢と所得で決まります。

2026年8月診療分から、この上限額が見直されました。大きく変わったのは2つです。

  • 月ごとの上限額が見直された
  • 新しく「年間上限」ができた。月ごとの自己負担が積み上がっても、年間の上限額に達した後は、それ以上の医療費は保険者から払い戻しを受けられる。ここでいう年間は、8月から翌年7月まで

69歳以下の上限額は、厚生労働省の表ではこうなっています(令和8年8月〜令和9年7月のぶん)。

標準報酬月額(健康保険) 月ごとの上限額 多数回該当 年間の上限額
83万円以上 270,300円+(医療費−901,000円)×1% 140,100円 1,680,000円
53万〜79万円 179,100円+(医療費−597,000円)×1% 93,000円 1,110,000円
28万〜50万円 85,800円+(医療費−286,000円)×1% 44,400円 530,000円
26万円以下 61,500円 44,400円 530,000円
住民税非課税 36,900円 24,600円 290,000円

※ 26万円以下のうち、年収約200万円まで(標準報酬月額15万円以下)の区分に当たると確認できた人は、年間上限41万円が適用され、令和9年8月以降に払い戻しになると、表の注に書かれています。

多数回該当とは、直近12か月の間に高額療養費に当たった月が3か月以上あると、4か月目からは上限額がさらに下がる仕組みです。この金額は、令和9年7月までは据え置きです(令和9年8月からは、年収約200万円以下の区分だけ下がります)。

厚生労働省のページには例も載っています。69歳以下・年収約370万〜約510万円の人が医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は約9.3万円まで。表の式で計算すると、85,800円+(1,000,000円−286,000円)×1%=92,940円で、合っています。

見方の注意が2つあります。

  • 自分がどの段かは、自分の「標準報酬月額」で探します。国民健康保険の人は、同じ表の「旧ただし書き所得」の列で決まります。任意継続でも国民健康保険でも、この上限の仕組み自体はあります
  • 2027年8月から、もう一度変わります。所得の区分が細かく分かれ、たとえば標準報酬月額28万〜34万円は85,800円+1%のまま、36万〜41万円は98,100円+(医療費−327,000円)×1%、44万〜50万円は110,400円+(医療費−368,000円)×1%になります。年間上限の額(この帯は530,000円)は据え置きです。今効いているのは上の表のほうです

もう1つ、私の健康保険は健保組合です。組合によっては、自己負担をさらに減らす独自の上乗せがあると聞きますが、私の組合にあるかはまだ見ていません。

病気・けが②:仕事を休んだときの傷病手当金。退職して任意継続になってからの病気には出ない

傷病手当金は、病気やけがで仕事を休み、給料が出ないときの生活を支える制度です。協会けんぽのページでは、条件は次の4つです。

  1. 業務外の病気・けがの療養のための休業である
  2. 仕事に就けない
  3. 連続する3日間(待期)を含み、4日以上仕事に就けなかった
  4. 休んだ期間に給与の支払いがない(給与が出ても手当金より少なければ、差額が出る)

1日あたりの額は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均÷30×2/3。ページの例では、平均17万円なら1日3,780円です。もらえる期間は、支給開始日から通算して1年6か月です。

再雇用で働いている間は、会社の健康保険に入っているので、この制度の対象です。

ところが、退職した後は話が変わります。協会けんぽのページには、はっきりこう書かれています。

任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては、傷病手当金は支給されません。

つまり、退職して任意継続に入ってから病気になっても、傷病手当金は出ません。

例外は「資格喪失後の継続給付」です。

  • 退職日までに、健康保険に継続して1年以上入っていた(任意継続や国民健康保険の期間は数えない)
  • 退職日に(資格を失う日の前日に)、傷病手当金を受けている、または受けられる状態だった

この2つがそろえば、退職後も引き続き受けられます。ただし、いったん仕事に就ける状態になったら、その後また就けなくなっても出ません。また、協会けんぽのよくある質問には、退職日に出勤すると、継続給付の条件を満たさないとも書かれています。さらに、継続給付を受けている間に老齢厚生年金などを受け取る人になると、傷病手当金は出ません(年金額の360分の1が手当金の日額より低いときは、差額が出ます)。

国民健康保険はどうか。厚生労働省の「国民健康保険制度の概要」では、傷病手当金は「給付を行うことができる」ものとされています。出すかどうかは保険者しだいで、どこでも出るとは限りません。国民健康保険に入るなら、お住まいの市区町村で確かめる必要があります。

ここで書いたのは協会けんぽの決まりです。私は健保組合なので、自分の組合の規約はまだ見ていません。

亡くなったとき:遺族厚生年金は「受け取れる遺族の順番」が決まっている

日本年金機構のページによると、遺族厚生年金は、亡くなった人に生計を維持されていた遺族のうち、最も優先順位の高い人が受け取ります。順番はこうです。

  1. 子のある配偶者
  2. 子(18歳になった年度の3月31日までにある人など)
  3. 子のない配偶者
  4. 父母
  5. 孫(18歳になった年度の3月31日までにある人など)
  6. 祖父母

父母と祖父母は、55歳以上の人に限って受け取れます。受け取り始めは60歳からです。

額は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。受け取れる条件の1つに「厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき」があり、再雇用で厚生年金に入って働いている間も、これに当たります。

逆に言えば、この順番に当てはまる遺族がいなければ、遺族厚生年金を受け取る人はいません。ここは人によって大きく違うところです。

健康保険からは、被保険者が業務外で亡くなったとき、生計を維持されていた人が申請すると埋葬料50,000円が出ます。退職して資格がなくなった後でも、3か月以内に亡くなったときや、傷病手当金の継続給付を受けている間に亡くなったときは出ます。

国の保障との差を並べる:民間で埋める候補になるのは何か

ここまでで、国の制度で残るものが見えました。そのうえで、国の制度では埋まらない差の候補を並べます。どれも「候補」です。要る・要らないは、人によって違うので決めつけません。

  • 医療費以外の出費:高額療養費の上限は、窓口で払う「医療費」の上限です。入院したときにかかる医療費以外の出費が、どこまでこの上限に入るかは、今回開いた資料では確かめられませんでした。入院の多い人ほど、ここが差になりえます
  • 退職後に病気で休んだときの収入:任意継続になってからの病気には傷病手当金が出ません。国民健康保険も、出すかどうかは保険者しだいです
  • 遺族年金を受け取る人がいない場合の、亡くなった後の費用:健康保険の埋葬料は5万円です。それ以上の費用を誰がどう用意するかは、国の制度では決まっていません

金額は書きません。相場を示す国の資料が無いからです。

私が会社に聞くことと、まだ決めていないこと

この記事を書いて、会社に聞くことが3つ決まりました。

  1. 会社を通した団体保険があるか。あるなら、何が出る保険か
  2. 定年後・再雇用後も続けられるか。続けられるなら、保険料はどうなるか
  3. 健保組合に、高額療養費の上乗せ(付加給付)があるか。これは組合のサイトでも分かるはずです

そして、何に入り直すか(入り直さないか)は、まだ決めていません。国の保障との差は並べられましたが、その差をどう埋めるかは、保険だけを見ても決められないと分かったからです。

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まとめ

  • 会社の団体保険の中身は会社ごとに違い、国の資料には無い。会社に聞く
  • 民間に入り直す前に、国の保障で何が残るかを先に確かめる
  • 高額療養費:2026年8月診療分から上限額が見直され、年間上限ができた(年間=8月から翌年7月まで)。2027年8月にも区分が細かくなる
  • 傷病手当金:働いている間は対象。任意継続中に発生した病気・けがには出ない。退職後も受けるには「継続給付」の条件がいる。国民健康保険は保険者しだい
  • 遺族厚生年金:最も優先順位の高い遺族が受け取る。父母・祖父母は55歳以上に限り、60歳から。額は報酬比例部分の4分の3。健康保険の埋葬料は50,000円
  • 民間で埋めるのは、国の保障との差だけ。何に入り直すかは、私はまだ決めていない

この記事で使った資料

決まりと数字は、すべてこの8つの資料から引きました。個人の解説記事・動画・保険会社の宣伝は、論点を探すためだけに使い、根拠にはしていません。