役職定年の実測ノート

役職定年で何が起きるかを、実測の数字と当事者の一次情報で。

定年で辞めるか、再雇用に残るか。決める前に国の資料で並べた5つのこと(60歳で辞めても年金はまだ出ません)

定年で辞める?再雇用に残る?65歳。60歳で辞めても年金はまだ出ない。決める前に国の資料で5つ並べました

「65歳まで同じ会社で働くか、ここで区切って違う道に行くか。決め手になる材料が無い」

定年前の悩みを集めていると、この形で止まっている人が何人もいました。

「60歳を過ぎて働いている先輩が身近にいないので、相談する相手がいない」。「周りに聞くと、全員が"我慢して再雇用に残れ"と言う」。「定年の1年前に、給料は下がるのに仕事は同じと知らされて、辞めるべきか迷っている」。4人が、同じところで立ち止まっていました。

私は2027年2月に60歳になります。再雇用に残ることは、もう決まっています。

ただ、残ると決めた人間が「残るほうがいい」と書いても、辞めたい人の役には立ちません。だからこの記事では、気持ちの話をいったん置いて、「60歳で辞めたら何が起きるか」「残ったら何があるか」を、国の資料だけで並べます。

先に言っておくと、どちらが得かの結論は書きません。人によって答えが変わるからです。書くのは、決める前に知っておかないと後から取り返せない5つのことです。

なお、残るにしても辞めるにしても、先に会社から聞き出しておく情報があります。それは定年前に会社へ聞くこと7つにまとめました。この記事は、その答えを受け取ったあとに並べる表の作り方だと思って読んでください。

定年で辞めるか、再雇用に残るか。私は残るほうを選びました

「残るか辞めるか」で検索すると、出てくる記事の多くは、気持ちの持ち方か、損得の早見表で終わります。

読んで思ったのは、早見表の数字が、誰の・いつの・どの資料の数字なのかが分からない、ということでした。

そこで、日本年金機構とハローワークのページを自分で開いて、原文に書いてあることだけを拾いました。並べてみると、話は思っていたより単純でした。

① 60歳で辞めても、年金はまだ出ません

老齢基礎年金は、受給資格期間が10年以上ある場合に65歳から受け取れます(日本年金機構「老齢年金」)。老齢厚生年金も、原則65歳からです。

「60歳から年金が出る」という話を聞いたことがある人もいると思います。それは「特別支給の老齢厚生年金」のことで、対象は生年月日で決まっています。

対象になる生年月日
男性 昭和36年4月1日以前に生まれた人
女性 昭和41年4月1日以前に生まれた人

(日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」。ほかに、受給資格期間10年・厚生年金に1年以上加入などの要件があります)

私は2027年2月に60歳なので、この対象ではありません。

つまり、この生年月日より後に生まれた人が60歳で辞めると、65歳まで年金が出ない5年間ができます。「辞める」を考えるとき、いちばん最初に置くべき事実はこれでした。

② 年金を60歳から繰上げると、減った率は一生変わりません

「それなら年金を早めにもらえばいい」と考える人もいると思います。実際、60歳から65歳になるまでの間に繰上げて受け取ることはできます。

ただし、日本年金機構のページには、はっきりこう書いてあります。

繰上げ受給の請求をした時点に応じて年金が減額され、その減額率は一生変わりません。 (日本年金機構「年金の繰上げ受給」)

減額率の計算は次のとおりです。

  • 減額率(最大24%)=0.4%×繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数
  • 60歳0か月で繰上げると、24.0%減
  • 昭和37年4月1日以前生まれの人は、1か月0.5%(最大30%)

さらに、原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げ請求する必要があります(同上)。

同じページには、もう1つ注意書きがあります。65歳になるまでの間に、雇用保険の基本手当や高年齢雇用継続給付を受ける場合は、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になります(老齢基礎年金は停止されません)。

「5年間の穴を繰上げで埋める」は、65歳から先の年金をずっと減らす選択です。しかも、次に書く失業給付と同時にまるごと受け取れるわけではありません。

③ 失業給付は「しばらく休みたい」なら出ません

辞めたあとの支えとして、失業給付(雇用保険の基本手当)を思い浮かべる人も多いと思います。

ハローワークのページには、受けられない場合の例として、次の一文があります。

定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき (ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」)

基本手当は、また働くつもりで仕事を探している人のためのものです。受給中は、認定の期間ごとに原則2回以上の求職活動の実績が必要です(同上)。

受けるための条件と期限は、次のとおりです。

  • 離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること
  • 受け取れる期間(受給期間)は、原則として離職した日の翌日から1年間

(ハローワーク「基本手当について」)

「辞めて少し休んでから考える」と「失業給付をもらう」は、両立しません。ここを知らずに辞めると、あてにしていた収入が最初から無い、ということになります。

④ もらえる日数は、区分と加入期間で決まります

基本手当を何日分もらえるか(所定給付日数)は、離職の理由による区分と、雇用保険に入っていた期間で決まります。

特定受給資格者・一部の特定理由離職者・就職困難者以外の離職者の日数は、次のとおりです。

被保険者であった期間 給付日数
10年未満 90日
10年以上20年未満 120日
20年以上 150日

(ハローワーク「基本手当の所定給付日数」)

ここで1つ、書かないと決めたことがあります。

「定年退職は、この表の区分に入る」と断定する文は書きません。私が開いたハローワークのページには、定年で辞めた人がどの区分になるかは書いてありませんでした。区分は辞めた事情によって変わりうるので、自分がどの区分になるかは、ハローワークで確かめることにしてください。

いずれにしても、最も長い150日でも、約5か月です。①の「5年間」とは、長さの桁が違います。

⑤ 残った場合:賃金が75%未満に下がると、高年齢雇用継続給付があります

では、残る側には何があるのか。

雇用保険に入っていた期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の人が、60歳時点の賃金の75%未満に下がった状態で働き続けると、「高年齢雇用継続給付」が支給されます(ハローワーク「雇用継続給付」)。

  • 各月の賃金が60歳時点の64%以下に下がった場合は、各月の賃金の10%相当額
  • 64%超75%未満の場合は、下がり方に応じて10%相当額未満
  • 各月の賃金が397,369円を超える月は支給されない(この額は毎年8月1日に変更)
  • 支給されるのは、60歳に達した月から65歳に達する月まで

(同上。令和7年3月31日以前に60歳に達した人は、61%以下で15%という以前の率になります)

ハローワークの例では、60歳時点の賃金が月30万円で、60歳以後に18万円(60%)に下がった場合、18万円の10%にあたる1万8千円が支給されます(同上)。

ここも、自分に不利な側を書いておきます。30万円が18万円になれば、月に12万円下がります。給付は1万8千円です。下がった分の全部を埋めてくれるわけではありません。

なお、辞めて基本手当を受けたあと、60歳以後に再就職した人向けには、別に「高年齢再就職給付金」があります(同上)。この記事では中身の数字までは扱いません。

並べると、問いは1つに縮みます:「65歳までの5年間、何で暮らすか」

①〜⑤を1枚にすると、こうなりました。

60歳で辞める 再雇用に残る
年金 65歳まで出ない(特別支給の対象外の場合) 同じく65歳から
繰上げ できるが、減額は一生続く できるが、減額は一生続く
雇用保険から 基本手当。仕事を探す場合だけ、区分と期間で決まる日数分 高年齢雇用継続給付。賃金が75%未満に下がった場合、最大で賃金の10%
給料 なし(次の仕事が決まるまで) 下がる。給付は下がった分の全部は埋めない
残るもの 自分の時間、次の道を選ぶ自由 通勤、同じ職場、同じ人間関係

並べて分かったのは、どちらを選んでも、「65歳までの5年間を何で暮らすか」という問いからは逃げられない、ということです。

辞めるなら、その5年間を貯えと次の仕事で埋めることになります。残るなら、下がった給料と給付で埋めることになります。

「我慢して残れ」という周りの声が正しいとも、辞めたい気持ちが間違っているとも、私は思いません。表のどの行を重く見るかは、その人の貯えと、体と、家族の事情で変わるからです。

ここが、私がまだ埋められていない穴です

偉そうに表を作りましたが、私の表には、まだ空欄があります。

再雇用後の賃金額を、私はまだ知らされていません。だから、残った場合の5年間の総額も、高年齢雇用継続給付が毎月いくらになるのかも、計算できていません。比べるための片側の数字が、空欄のままです。

制度は並べ終わりました。残っているのは、自分の貯えと、提示される賃金と、65歳からの年金見込みを、1枚に並べて見る作業です。

【PR】この「自分の数字の当てはめ」は、ひとりでやると時間がかかると感じています。家計の見通しを人に見てもらうのも、1つの手です。ただ、相談したからといって、残るか辞めるかが決まるわけではありません。私はまだ使っていません。使ったら、実測としてここに書きます。※リンク先は、保険の見直しを中心にした無料相談です(1〜2時間の面談があります)。

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まだ分かっていないこと

  • 私の再雇用後の賃金額。まだ教えてもらっていません
  • もし辞めた場合、私がどの区分の離職者になるか。ハローワークで確かめる事項なので、この記事では断定していません
  • 65歳からの私の年金見込額。まだ確かめていないので、数字は書いていません

賃金額の提示を受けたら、空欄を埋めた表を実測として書きます。

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まとめ

  • 特別支給の老齢厚生年金の対象外(男性は昭和36年4月2日以降、女性は昭和41年4月2日以降の生まれ)なら、60歳で辞めても年金は65歳まで出ない
  • 年金は60歳から繰上げられるが、減額率は一生変わらない(60歳0か月で24%減)。基本手当や高年齢雇用継続給付を受ける場合は、老齢厚生年金の一部または全部が止まる
  • 失業給付は「しばらく休養したい」なら受けられない。受給期間は原則、離職日の翌日から1年間
  • 給付日数は区分と加入期間で決まる(一般の区分なら90〜150日)。自分の区分はハローワークで確かめる
  • 残った場合、賃金が75%未満に下がれば高年齢雇用継続給付(64%以下で賃金の10%)。下がった分の全部は埋まらない
  • どちらを選んでも、「65歳までの5年間を何で暮らすか」という問いが残る

この記事で使った資料

数字と決まりは、すべてこの7つから引きました。個人の解説記事や動画は、論点を探すためだけに使い、根拠にはしていません。