役職定年の実測ノート

役職定年で何が起きるかを、実測の数字と当事者の一次情報で。

再雇用でボーナスが出ない・少ないのは違法? 国のガイドラインで確かめました

再雇用でボーナスが出ない・少ないのは違法? 賞与は「目的」で見る。厚労省のガイドラインで確かめました

私は2027年2月に60歳になります。定年のあとは同じ会社に再雇用で残る予定です。

再雇用の話になると、たいてい月の給料がいくら下がるかに目が行きます。でも、年収で見るとボーナス(賞与)も大きな部分です。再雇用のあとに賞与が出るのか、出るならいくらなのか。私はまだ分かっていません。会社の提示を待っているところです。

定年前後の悩みを集めていると、賞与の声も出てきます。嘱託で辞めるときに、受け取った賞与の一部を返すように言われ、それが当たり前なのか分からずに迷っている人がいました。再雇用になってから、ほかの有期の人と比べて待遇が低いのは直してもらえるのか、と考えている人もいました。

待遇の差全体の話は、前に再雇用で給料は下がるのに仕事は同じ。会社に説明を求められますで書きました。この記事は賞与だけに絞って、厚生労働省の資料で確かめます。

再雇用になったら、ボーナスが出ない・少ない。これは許されるのか

先に、分かったことを書いておきます。

  • 賞与は、法律で「払わなければならない」と決まっているものではありません。払うなら、会社が就業規則などで決めます
  • ただし国のガイドライン(指針)は、賞与を「何に対して払っているか」で見ています。定年後の再雇用の人も、この指針の対象です
  • だから、「再雇用だから賞与なし」は、それだけで違法とも、それだけで問題なしとも言えません
  • 2026年10月1日から適用された改正後の指針では、賞与について注意書き(注)が新しく加わりました

ここから、ひとつずつ資料で確かめていきます。

賞与は、法律で「払わなければならない」と決まっているものではない

厚生労働省の「モデル就業規則」(平成30年1月・労働基準局監督課)は、賞与の条文の解説でこう書いています。

  • 賞与は、労働基準法その他の法律で設けることが義務づけられているものではない
  • ただし、賞与を支給する場合は、就業規則に支給対象時期、賞与の算定基準、査定期間、支払方法などを明確にしておく必要がある
  • 支給の対象を、ある日(たとえば6月1日や12月1日、または支給日)に在籍した人とする規定を設けて、その日にいない人には支給しないこともできる

3つ目は、冒頭の「辞めるときに賞与を返すように言われた」という場面に関わります。支給日に在籍しているかどうか、支給の対象になる期間がいつからいつまでかは、会社の就業規則に書かれているはずのことです。

もう1つ、大阪労働局の「よくあるご質問」(賃金・退職金・賞与関係)のQ13には、賞与の減額についてこう答えています。

  • 賞与が就業規則などで支給時期・支給金額を前もって決めているものなら、減額は労働条件の変更になり、原則として個々の労働者の同意がなければ有効とされない
  • ただし、会社の業績や査定で支給額を決めると就業規則などに定めている場合もあり、適正な査定による減額であれば問題はないと思われる

つまり、賞与は会社の決め方しだいです。決め方を見ないと、何も判断できません。

国のガイドラインは、賞与を「貢献」と「目的」で見ている

では、正社員に出ている賞与が、再雇用の人に出ない・少ない場合はどう考えるのか。

厚生労働省の「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(同一労働同一賃金ガイドライン)の「2 賞与」は、まず原則をこう書いています。

  • 会社の業績などへの貢献に応じて支給する賞与なら、正社員と同じ貢献の有期の人には、その部分について同じ賞与を支給しなければならない
  • 貢献に違いがあるなら、その違いに応じた賞与を支給しなければならない

指針には、例も載っています。

問題とならない例として挙げられているのは、正社員のXだけが生産効率や品質の目標に責任を負い、達成できないと待遇上の不利益を受ける会社です。責任も不利益も負わない人には、その見合いの範囲内で賞与を出していない。これは問題にならない、とされています。

問題となる例として挙げられているのは、次の2つです。

  • 正社員のXと同じ貢献がある有期のYに、Xと同じ賞与を出していない
  • 正社員には、職務の内容や貢献にかかわらず全員に何らかの賞与を出しているのに、短時間・有期の人には出していない

10月1日から、注意書きが加わった

この指針は、令和8年4月28日の厚生労働省告示第203号で改正され、令和8年(2026年)10月1日から改正後の内容が適用されています。

改正後の「2 賞与」の最後には、(注)が付いています。新旧対照表を確かめると、改正前の欄は「新設」となっていました。

(注)の中身を、私の言葉でまとめるとこうです。

  • 賞与には、働いた分の後払い、功労への報い、生活費の補助、働く意欲を上げることなど、いろいろな性質や目的が含まれうる
  • その目的が、正社員と同じように有期の人にも当てはまるのに、仕事の中身などの違いに応じた釣り合いのとれた賞与を出さず、
  • しかもその代わりに、労使の話し合いを経て基本給を高くしているなどの事情もない場合は、
  • その賞与の差は、不合理と認められるものに当たりうる

「当たりうる」です。「違法になる」とは書かれていません。ここを読み違えないようにしたいと思います。

定年後の再雇用も、対象になる

「定年後の再雇用だから、この話は関係ない」と思っていました。違いました。

改正後の指針の「第2 基本的な考え方」の「2 定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者の取扱い」には、こう書かれています。

  • 定年後に継続雇用された有期雇用の人にも、短時間・有期雇用労働法が適用される
  • 正社員と再雇用の人との間に、仕事の内容や、仕事の内容・配置の変わる範囲などに実際の違いがあれば、その違いに応じた待遇の違いは許される
  • 定年後の継続雇用であることは、待遇の差が不合理かどうかを判断するときに「その他の事情」として考慮されうる
  • ただし、定年後に継続雇用された人であることだけを理由に、ただちに待遇の差が不合理ではないと認められるものではない

新旧対照表で見ると、この項は改正前は基本給の(注)の中にあり、「賃金の相違」についての書き方でした。改正後は、指針の基本的な考え方の中に移り、「それぞれの待遇について、その性質と目的に照らして」様々な事情を総合して判断する、という書き方になっています。賞与も、その「それぞれの待遇」の1つです。

会社と本人の側から見ると、何が見えるか

ここで、誰かを悪者にしたくはありません。指針の書き方を、会社と本人の両方の側から並べてみます。

会社の側から見ると

  • 賞与は法律の義務ではなく、会社が就業規則で決めるものです
  • 指針も、責任や不利益の見合いで賞与に差をつけることを、問題にならない例として挙げています
  • 再雇用で仕事の中身や責任が変わっているなら、その違いに応じた差は許されます

本人の側から見ると

  • 賞与に生活費の補助や意欲を上げる目的が含まれていて、それが再雇用の自分にも当てはまるなら、釣り合いのとれた賞与があるかどうかを問える
  • 「再雇用だから」だけでは、差の理由として足りない
  • 差の理由を会社に聞く話は、冒頭で紹介した「会社に説明を求められます」の記事に書きました

どちらが得か損かは、書きません。国の資料には損得の記述がありませんし、答えは会社ごとの賞与の目的と、仕事の中身の違いで変わります。

定年前にやること:賞与について、会社に確かめる3つ

資料を読んで、会社に確かめることは3つに絞れました。

  1. 再雇用のあとに賞与はあるか。あるなら、何を基準に決めるのか(業績か、個人の評価か、一律か)
  2. 賞与の支給対象期間と、支給日に在籍していることが条件になっているか(辞める時期を考えるときに効きます)
  3. 正社員との差の理由を聞きたいとき、どこに聞けばよいか

会社に聞くことの全体は、下の「あわせて読む」の「定年前に会社へ聞くこと7つ」にまとめてあります。賞与は、そこに足す1つです。

会社と話がかみ合わないときの外の窓口もあります。厚生労働省の「総合労働相談コーナー」は、各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内などの378か所にあり、予約不要・無料です。土・日・祝日と年末年始は閉まっています。

ここが、私がまだ埋められていない穴です

決まりは分かりました。賞与は会社が決めるもの。ただし、目的が再雇用の人にも当てはまるのに、理由なく出さないのは不合理に当たりうる。

それでも、私の会社の場合に再雇用のあと賞与が出るのか、出ないなら賃金全体でどう見ればよいのかは、まだ分かりません。会社の提示待ちです。

賞与があるかないかで、再雇用後の年収の見通しは大きく変わります。月の給料だけで家計を組むと、年に1〜2回の大きな出費をどこから出すのかが決まりません。

【PR】「賞与が出ない前提で、再雇用後の年収と家計を組み直す」という作業は、資料を読むだけでは終わりません。お金の見通しを外の人に一度見てもらうのも、手段の一つだと思っています。ただし、相談したからといって賞与が増えるわけでも、正解が決まるわけでもありません。私はまだ使っていません。使ったら、実測としてここに書きます。※リンク先は、保険の見直しを中心にした無料相談です(1〜2時間の面談があります)。

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まだ分かっていないこと

  • 私の会社で、再雇用のあとに賞与が出るか。算定の基準と支給対象期間も含めて、会社の提示待ちです
  • 会社の就業規則の賞与の規定。まだ読み比べていません

分かったら、書き足します。

あわせて読む

まとめ

  • 賞与は、法律で設けることが義務づけられているものではない。払うなら、時期・算定基準・支払方法などを就業規則に明確にする(厚労省モデル就業規則)
  • 支給日に在籍した人だけに支給する規定も可能。辞める時期を考えるなら、支給対象期間と在籍の条件を確かめる
  • 支給時期・金額が前もって決まっている賞与の減額は、原則として個々の同意が要る(大阪労働局Q13)
  • 指針は、貢献に応じた賞与なら、同じ貢献には同じ賞与、違いがあれば違いに応じた賞与を求める
  • 正社員には全員に何らかの賞与を出しているのに、有期の人には出していないのは問題となる例
  • 2026年10月1日から、賞与の性質・目的(後払い・功労報償・生活費の補助・意欲向上など)を挙げた(注)が加わった。差は不合理と認められるものに「当たりうる」
  • 定年後の再雇用も対象。ただし仕事の中身などに実際の違いがあれば、その違いに応じた差は許される
  • 定年後の継続雇用であることは考慮されうるが、それだけで差が不合理でないとは認められない

この記事で使った資料

決まりと数字は、すべてこの6つから引きました。裁判例や、個人の解説記事・動画は、論点を探すためだけに使い、根拠にはしていません。