役職定年の実測ノート

役職定年で何が起きるかを、実測の数字と当事者の一次情報で。

再雇用の1年契約、次の更新で切られる? 国の資料の答えは「65歳までは原則更新」でした(ただし条件は毎年変わりえます)

再雇用の1年契約、次で切られる?65歳までは原則として契約が更新されます。ただし条件は毎年変わりえます

私は2027年2月に60歳になります。定年のあとは、同じ会社に再雇用で残ることが決まっています。

決まったと聞いたとき、私は「これで65歳まで席がある」と受け取りました。ところが、再雇用の話をしている人たちの書き込みを読んでいて、手が止まりました。

私が読んだ中には、こういう人たちがいました(本人の言葉そのままではなく、内容を言い換えています)。

  • 再雇用を望んだのに、そうならなかった人。61歳でハローワークに通い、年齢を問わない求人が数えるほどしかない、と書いていました
  • 1年目に2割下がり、2年目にもう一段下がった人。仕事の中身と責任は現役のときと変わらない、とのことでした
  • 再雇用の2年目に病気で休み、次の更新で切られるのではないかと案じている人。更新の時期は誕生日だそうです

3人に共通しているのは、「再雇用は一度決まれば65歳まで安泰」ではなかった、という形でした。

私の契約も、おそらく1年ごとです。おそらく、と書いたのは、まだ確かめていないからです。そこで先に、国の資料のほうを確かめました。この記事は、その記録です。

なお私は以前、定年前に会社へ聞くこと7つという記事を書きました。あの7つは、再雇用に入るまでの話でした。更新のことは、1つも入っていません。この記事は、入ったあとの話です。

再雇用が決まったら65歳まで、と思っていました

「再雇用が決まった」と言われたとき、私が思い浮かべたのは65歳までの5年間でした。

いま考えると、根拠はありません。契約が1年ごとなのか、更新はいつなのか、更新しないことがあるのか。私は、そのどれも聞いていません。

読んだ3人の話は、私の思い込みの3か所を、それぞれ別の方向から突いてきました。そもそも再雇用されないことがある。更新はされても条件が下がることがある。病気で休むと更新が危うくなるのではないか。

確かめる先は、厚生労働省の「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」です。令和7年3月31日改訂、令和7年4月1日適用の版が公開されています。以下、このQ&Aの問いの番号(Q1-1、Q1-4など)をそのまま引きます。

国の答え①:継続雇用制度は「希望者全員」が対象です

まずQ1-1です。会社が65歳までの雇用を確保する方法として継続雇用制度(定年後も引き続き雇う制度。再雇用はこの一つ)を選んだ場合、その制度は希望者全員を対象とするものにしなければならないとされています。

事業主が高年齢者雇用確保措置として継続雇用制度を導入する場合には、希望者全員を対象とするものにしなければなりません。 (厚生労働省 高年齢者雇用安定法Q&A A1-1)

同じ答えには、制度を適切に運用するためにも、労働者の意思を確認する必要があるとも書かれています。

「希望者全員」には、少し前まで例外がありました。平成24年度までに労使協定で対象者を絞る基準を定めていた会社は、経過措置として、その基準を使うことが認められていたのです。この経過措置は2025年3月31日で終わりました。

2025年4月1日以降、会社が採る道は次の3つのいずれかです(厚生労働省「経過措置の終了」)。

  • 定年制の廃止
  • 65歳までの定年の引き上げ
  • 希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入

ただし同じページには、この経過措置の終了によって65歳までの定年の引き上げが義務になるわけではない、という注意も書かれています。65歳定年になったわけではありません。

そして、ここを読み違えないようにという但し書きがQ1-3にあります。

高年齢者雇用安定法は、事業主に定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の高年齢者雇用確保措置を講じることを義務付けているものであり、個別の労働者の65歳までの雇用義務を課すものではありません。 (同 A1-3)

つまりこの法律は、会社に「制度を作れ」と言っているもので、私に「65歳まで雇え」と言う権利を直接くれるものではない、ということです。この記事でも「65歳まで保証されている」とは書きません。書けるのは、次に出てくる「原則として更新される」というところまでです。

国の答え②:1年ごとの契約でも、65歳までは原則として更新されます

私がいちばん知りたかったのがここでした。Q1-4は、私とほとんど同じ問いから始まります。定年退職者を再雇用するときに、嘱託やパートなど従来と違う労働条件にしてよいか。その場合、1年ごとに雇用契約を更新する形でよいか。

答えのうち、更新についての部分はこうです。

1年ごとに雇用契約を更新する形態については、高年齢者雇用安定法の趣旨にかんがみれば、年齢のみを理由として65歳前に雇用を終了させるような制度は適当ではないと考えられます。 (同 A1-4)

そのうえで、必要なこととして2つが挙げられています。

  1. 65歳を下回る上限年齢が設定されていないこと
  2. 65歳までは、原則として契約が更新されること(ただし、客観的に合理的な理由がある場合等は契約を更新しないことは認められる)

そして答えは、「個別の事例に応じて具体的に判断されることとなります」という一文で閉じられています。この一文も落とさずに読む必要があります。一般論としては原則更新、しかし自分の件がどうなるかは、その事情次第、ということです。

「1年契約だから毎年切られるかもしれない」も、「再雇用だから65歳まで安泰」も、どちらも国の資料の書き方とは違いました。資料の答えは、その真ん中にあります。

会社には「65歳までは更新できる」と知らせることが求められています

もう1つ、Q&Aとは別に見つけたものがあります。指針です。

高年齢者雇用確保措置の実施及び運用については、令和7年厚生労働省告示第84号(令和7年4月1日から適用)という指針が出ています。その中の「賃金・人事処遇制度の見直し」の留意事項に、次の項目があります。

継続雇用制度を導入する場合において、契約期間を定めるときには、高年齢者雇用確保措置が65歳までの雇用の確保を義務付ける制度であることに鑑み、65 歳前に契約期間が終了する契約とする場合には、65歳までは契約更新ができる旨を周知すること。また、むやみに短い契約期間とすることがないように努めること。 (高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針 第2の3(4))

「65歳までは契約更新ができる旨を周知すること」。つまり、1年契約にするなら、その説明は会社の側からされることになっている、と読めます。

私は、この説明を受けた記憶がありません。受けていないのか、聞き流したのかも分かりません。だからこれは、確かめる項目に入れます。

例外:就業規則の解雇事由・退職事由に当たるとき

では、「原則として更新される」の原則から外れるのは、どういうときか。

Q1-1と、Q1-4の注に、同じ内容が書かれています。

心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。)に該当する場合には、継続雇用しないことができます。 (同 A1-1)

大事なのは(年齢に係るものを除く。)という括弧です。年齢を理由にすることはできません。

そして、そのすぐ後に、こう続きます。

なお、継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められることに留意が必要です。 (同 A1-1)

契約を更新しない場合についても、Q1-4の注に同じ趣旨が書かれています。

ここで、病気で休んでいる人の話に戻ります。「病気で休んだら更新されない」とも、「休んでも大丈夫」とも、私には書けません。資料が言っているのは、

  • 判断の入口は自分の会社の就業規則に書かれた解雇事由・退職事由であること
  • 年齢を理由にすることはできないこと
  • 更新しないなら、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められると考えられること

までです。分かれ目は、自分の会社の就業規則の書き方の中にあります。だから、就業規則のどこを見ればいいかを知っておくことが、先にやることになります。

切られなくても、条件は変わりえます

ここからは、自分に都合の悪い側を書きます。

「65歳までは原則更新」だとしても、同じ条件で更新される、とは書かれていません。Q1-4は、労働条件についてこう書いています。

フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関して、事業主と労働者の間で十分に話し合い決めることが重要です。 (同 A1-4)

そして指針のほうには、賃金についてこうあります。

継続雇用制度を導入する場合における継続雇用後の賃金については、継続雇用されている高年齢者の就業の実態、生活の安定等を考慮し、適切なものとなるよう努めること。 (高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針 第2の3(2))

「努めること」です。金額の下限が決まっているわけではありません。

さらにQ1-7には、合意できなかった場合のことが書かれています。

高年齢者雇用安定法が求めているのは、高年齢者の安定した雇用を確保するための制度の導入であって、事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではなく、事業主が自社の状況等を踏まえ、合理的な裁量の範囲での条件を提示した場合には、労働者と事業主との間で労働条件等についての合意が得られず、結果的に労働者が継続雇用されることを拒否したとしても、高年齢者雇用安定法違反となるものではありません。 (同 A1-7)

長い一文ですが、要は「希望どおりの条件で雇え」という話ではないということです。

これを読んで、2年目にもう一段下がったという人の話が、私の中でつながりました。「更新される」と「同じ条件で更新される」は、別の話です。1年ごとの契約なら、条件を決め直す機会も毎年来ます。

ただし、下がり方の説明を求めることはできます。Q1-4には、定年後に継続雇用された有期雇用労働者にも短時間労働者及び有期雇用労働者の法律が適用されること、同一労働同一賃金ガイドラインでは、定年に達した後に継続雇用された者であることのみをもって待遇の相違が不合理でないと認められるものではないとされていることが書かれています。ここは再雇用で給料は下がるのに仕事は同じ。会社に説明を求められますに書いたとおりです。

65歳の先:70歳までは「努力義務」です

ついでに、その先も確かめておきました。

70歳までの就業機会の確保については、令和3年4月1日から施行された改正で、定年の引き上げ、定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度の導入などの措置を講じるよう努めることとされています(厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」)。

同じページに、70歳までの定年年齢の引上げを義務付けるものではありませんと明記されています。

65歳までと70歳までは、法律の強さが違います。ここは1段落で止めます。私が先に決めるのは、65歳までの5年間のほうだからです。

定年前にやること:更新について聞く3つ

制度の側は分かりました。残りは、自分の会社の側です。私は、次の3つを聞くことにしました。

  1. 契約期間は何年か。更新の時期はいつか(誕生日か、年度か、定年の月か)
  2. 更新しない場合の基準は、就業規則のどの条文か(病気で長く休んだときの扱いを含む)
  3. 更新のたびに、賃金や労働時間を見直すのか

聞き方も決めました。「65歳まで大丈夫ですか」とは聞きません。その聞き方では、答える側も「大丈夫だと思うよ」としか言えません。

代わりに、「更新の基準と時期は、就業規則のどこを見れば分かりますか」と聞きます。答えが文書の場所で返ってくる聞き方にします。

会社に聞いても分からないとき、または会社の説明が資料と食い違うときの相談先も、資料に書いてあります。都道府県労働局、またはハローワークです(厚生労働省「経過措置の終了」)。

ここが、私がまだ埋められていない穴です

ここまでで、制度の答えは出ました。65歳までは原則更新。例外は就業規則の事由に当たるとき。条件は毎年決め直されうる。

それでも、私の手元には空欄が残っています。

毎年条件が見直されうるのなら、5年間の収入の見通しが立ちません。私はまだ、再雇用の1年目の賃金額さえ知らされていません。2年目以降がどうなるかは、なおさら分かりません。

そして、国の資料には、そこは1行も書いてありません。書いてあるのは「十分に話し合い決めること」「適切なものとなるよう努めること」までです。いくらになるかは、資料の外にあります。

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まだ分かっていないこと

  • 私の再雇用契約の期間と、更新の時期。1年ごとなのかも確かめていません
  • 会社の就業規則の解雇事由・退職事由の書き方。とくに、病気で長く休んだときの扱い
  • 更新のたびに条件を見直す運用なのか
  • 再雇用後の賃金額。1年目の金額も、まだ教えてもらっていません
  • 「65歳までは契約更新ができる旨」の説明を、会社から受けているのか

分かったら、空欄を埋めて書きます。

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まとめ

  • 継続雇用制度を導入する場合、希望者全員を対象にしなければならない(Q1-1)。対象者を絞る基準の経過措置は2025年3月31日で終了
  • ただしこの法律は会社に制度を義務付けるもので、個別の労働者に65歳までの雇用義務を課すものではない(Q1-3)。だから「保証」とは書けない
  • 1年ごとの更新なら、65歳を下回る上限年齢がないことと、65歳までは原則として契約が更新されることが必要(Q1-4)。ただし個別の事例に応じて具体的に判断
  • 例外は、心身の故障や勤務状況が著しく不良など、就業規則に定める解雇事由・退職事由(年齢に係るものを除く)に該当するとき。その場合も客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められる
  • 指針は、1年契約にするなら「65歳までは契約更新ができる旨を周知すること」としている
  • 「更新される」と「同じ条件で更新される」は別。賃金は「適切なものとなるよう努める」までで、下限は決まっていない
  • 70歳までの就業機会の確保は努力義務。65歳までとは法律の強さが違う
  • 聞くときは「65歳まで大丈夫ですか」ではなく、「更新の基準と時期は、就業規則のどこを見れば分かりますか」

この記事で使った資料

数字と決まりは、すべてこの4つから引きました。個人の解説記事や動画は、論点を探すためだけに使い、根拠にはしていません。冒頭で触れた3人の話も、論点を探すために読んだもので、制度の根拠にはしていません。