60歳から再雇用で払う厚生年金は、65歳からの年金を増やすのか。増えるのは厚生年金だけで、基礎年金は増えません

私は2027年2月に60歳になります。定年のあとは同じ会社に再雇用で残り、65歳まで厚生年金に入り続ける予定です。
前回、再雇用で給料が下がったのに、社会保険料は前のまま?という記事で、保険料がいつ下がるかを調べました。あれは引かれる側の話です。
そのとき、ひとつ宿題を残していました。「将来の年金額との関係は、この記事では扱っていない」と書いた部分です。
60歳から65歳までの5年間、給料から厚生年金の保険料が引かれ続けます。その5年ぶんは、65歳からの年金にどう返ってくるのか。今回は、払った分が戻る側を、日本年金機構の資料で確かめました。
60歳から払う厚生年金は、掛け捨てなのか
再雇用の話を調べていると、「60歳を過ぎて払う厚生年金は掛け捨てではないか」という疑問によく行き当たります。税金や保険料のことを考えて、いつまで働くかを決めかねている、という声も見かけました。
先に、この記事で分かったことを書いておきます。
- 掛け捨てではありません。60歳から64歳までの加入期間も給料も、65歳からの老齢厚生年金の計算式に入ります
- ただし、老齢基礎年金(国民年金から出る部分)は、60歳以降に厚生年金に入っても増えません
- 自分がいくら増えるかは、ねんきん定期便と、再雇用後の給料の提示がそろって初めて計算できます
ここから、ひとつずつ資料で確かめていきます。
65歳からの年金は2階建て。基礎年金と厚生年金
会社員の年金は、よく「2階建て」と言われます。
日本年金機構のページ「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額」には、こう書かれています。
老齢厚生年金は、老齢基礎年金を受け取れる方に厚生年金の加入期間がある場合に、老齢基礎年金に上乗せして65歳から受け取ることができます。 (日本年金機構)
1階が老齢基礎年金、その上に乗る2階が老齢厚生年金です。
同じページで、65歳からの老齢厚生年金の額は次の式で示されています。
年金額 = 報酬比例部分 + 経過的加算 + 加給年金額
この記事で見るのは、このうち報酬比例部分と経過的加算の2つです。
もう1つ、私自身の事実を確かめておきます。65歳より前に出る「特別支給の老齢厚生年金」は、生年月日で対象が決まっています。「老齢年金ガイド 令和8年度版」(2ページ)の表では、男性は昭和36年4月2日以降に生まれた方は対象外です。
私は昭和42年2月生まれなので、対象外です。つまり60歳から64歳までの5年間は、年金は出ずに、保険料を払うだけになります。だからこそ、払った分がどこに入るのかを知っておきたいのです。
基礎年金は「20歳から60歳の40年」で決まる。60歳以降は増えない
まず1階の老齢基礎年金です。
老齢年金ガイド(5ページ)には、20歳から60歳になるまでの40年間の保険料をすべて納めると、満額の老齢基礎年金を受け取れる、と書かれています。
- 満額 = 年額847,300円(月額70,608円)(令和8年度の金額)
- 計算式の分母は 480月(40年)
数える期間が「20歳から60歳まで」と決まっているので、60歳から64歳までの再雇用の5年は、この式には入りません。基礎年金は、60歳以降に厚生年金を払っても増えないということです。
なお、同じページに「60歳から65歳になるまでの間に任意加入をすることで、満額の年金に近づけることができます」とありますが、ここには「第2号被保険者を除く」と書かれています。第2号被保険者は会社員など厚生年金に入っている人のことなので、再雇用で厚生年金に入る私は、この任意加入の対象ではありません。
増えるのは「報酬比例部分」。60歳以降の月数も給料も入る
では2階です。
老齢年金ガイド(6ページ)の報酬比例部分の式は、加入した時期で2つに分かれています。
| 加入期間 | 計算式 |
|---|---|
| 平成15年3月以前 | 平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × その期間の加入月数 |
| 平成15年4月以降 | 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × その期間の加入月数 |
60歳からの再雇用は、もちろん平成15年4月以降の期間です。下の式に入ります。
平均標準報酬額は、ガイドの説明では、平成15年4月以降の標準報酬月額と標準賞与額(それぞれ再評価したもの)の総額を、その期間の加入月数で割った額です。標準報酬月額は、給料をいくつかの幅に区切って当てはめた、計算用の月額のことです。
この式を見ると、2つのことが分かります。
- 60歳から64歳までの60か月も、「加入月数」に足される。月数が増えるぶん、報酬比例部分は増える方向に働きます
- その60か月の給料も、「平均標準報酬額」の計算に入る。再雇用で給料が下がれば、平均を引き下げる側にも働きます
2つ目は、式の形からそう読める、というところまでです。私の場合に平均がどのくらい動くのかは、給料額が分からないので言えません。
式に仮の数字を入れてみる(私の数字ではありません)
式だけでは実感がわかないので、仮の数字を入れてみます。
仮に、60歳から65歳になるまでの60か月を、標準報酬月額30万円・賞与なしで働いたとします。その60か月ぶんだけを式に入れると、
300,000円 × 5.481/1000 × 60か月 = 年98,658円
になります。
この数字には、3つ断りがあります。
- 仮の数字です。私の給料ではありません。私の再雇用後の給料は、まだ提示されていません
- 再評価率は考えていません。実際の計算では、過去の給料を今の価値に直す「再評価」が入ります
- これは「5年ぶんで上乗せされる報酬比例部分のおおよその大きさ」を見るためのものです。払う保険料と比べて得か損か、という結論ではありません
もう1つの調整「経過的加算」。60歳以後の加入期間がある人に関係する
65歳からの式にあった経過的加算も、60歳以降の加入に関係します。
老齢年金ガイド(6ページ)には、厚生年金の加入期間のうち「20歳前の期間と60歳以後の期間がある方」などは、定額部分に相当する額のほうが、65歳から受け取る老齢基礎年金の額よりも高くなる場合がある、と書かれています。その差を補うのが経過的加算です。
経過的加算額 = 定額部分に相当する額 - 厚生年金保険に加入していた期間について受け取れる老齢基礎年金の額
定額部分の式は、ガイド(7ページ)では次のとおりです。
定額部分 = 1,766円 × 1.000 × 被保険者期間の月数(昭和31年4月1日以前に生まれた方は1,761円)
基礎年金は60歳以降の加入では増えませんでしたが、定額部分に相当する額は被保険者期間の月数で計算されます。そのずれを埋める調整がある、ということです。
ただし、ガイドの注記には、定額部分の被保険者期間には上限の月数があることが読み取れます。私の加入月数によっては、60歳以降の加入でこの部分がどれだけ効くかが変わります。ここは金額を出さず、自分の加入月数をねんきん定期便で確かめることにしました。
65歳を過ぎて働く場合は、毎年10月に見直される
ここは一言だけ触れておきます。
老齢年金ガイド(14ページ)によると、65歳以降も厚生年金に入って働きながら老齢厚生年金を受け取っている人は、基準日(9月1日)に被保険者であれば、それまでの加入期間を足して10月に年金額を計算し直すしくみがあります。これを在職定時改定といいます。
また、退職して1か月が経つと、退職した翌月分から年金額が見直される(退職改定)とも書かれています。
私はまだ60歳前なので、先の話です。この記事では深入りしません。
定年前にやること:自分の数字を出す材料を2つそろえる
制度の仕組みは分かりました。自分の場合を計算するには、材料が2つ要ります。
- ねんきん定期便を見る。厚生年金の加入月数と、これまでの加入実績に応じた年金額を確かめる
- 会社から、再雇用後の給料の提示を受ける。以前「会社へ聞くこと」を整理したときも、ここは空欄のままでした
この2つがそろって初めて、さきほどの式に私の数字が入ります。
ここが、私がまだ埋められていない穴です
式は分かりました。60歳からの5年ぶんは、掛け捨てではなく、老齢厚生年金の式に入る。ここまでは国の資料ではっきりしています。
それでも、私の手元には空欄が残っています。再雇用後の給料額がまだ分からないので、5年ぶんでいくら増えるのかが出せません。そして、払う保険料と比べてどうなのかも出せません。
国の資料が教えてくれるのは計算式までです。私の場合の損得は、1行も書いてありません。
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まだ分かっていないこと
- 私の再雇用後の給料額。まだ提示されていません
- 私の厚生年金の加入月数。ねんきん定期便を見れば分かります(まだ見ていません)
- 払う保険料と、増える年金を比べた損得。計算に要る数字がそろっていません
分かったら、空欄を埋めて書きます。
あわせて読む
- 定年で辞めるか、再雇用に残るか — 60歳で辞めても、年金はまだ出ません。この記事の「60歳から64歳は払うだけ」と同じ事実の出どころです
- 定年前に会社へ聞くこと7つ — 再雇用後の給料の提示を待っている話です。この記事の「材料の2つ目」につながります
まとめ
- 65歳からの老齢厚生年金は、老齢基礎年金に上乗せされる。額は報酬比例部分+経過的加算+加給年金額
- 老齢基礎年金は20歳から60歳になるまでの40年(480月)で決まる。60歳以降に厚生年金に入っても、基礎年金は増えない
- 報酬比例部分(平成15年4月以降)は平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数。60歳から64歳の月数も給料も、この式に入る
- 仮に標準報酬月額30万円・賞与なしで60か月なら、式どおりで年98,658円(仮の数字。再評価率は考えていない。私の数字ではない)
- 20歳前や60歳以後の加入期間がある人には、経過的加算という調整がある。効き目は加入月数による
- 自分の数字を出すには、ねんきん定期便の加入月数と再雇用後の給料の提示の2つが要る
- 払う保険料と比べた損得は、国の資料には書かれていない
この記事で使った資料
- 日本年金機構「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/jukyu-yoken/20140421-01.html
- 日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」(2・5・6・7・14ページ) https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03.pdf
- 日本年金機構 用語集「経過的加算」 https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/kagyo/keikatekikasan.html
数字と決まりは、すべてこの3つから引きました。計算例の98,658円は、ガイドの式に仮の数字を入れて私が計算したものです。個人の解説記事や動画は、論点を探すためだけに使い、根拠にはしていません。