再雇用で勤務時間を減らすと社会保険はどうなる? 「4分の3」と「週20時間」の線を国の資料で確かめました

私は2027年2月に60歳になります。定年のあとは、同じ会社に再雇用で残る予定です。
会社の定年の資料には、再雇用のあとの社会保険について「労働条件に応じて加入」と書かれていました。つまり、どんな条件で働くかによって、入るかどうかが変わるということです。
私は会社に「給料が減るのだから、リモートを増やして出社を減らしてほしい」と申し入れていて、まだ回答を待っています。再雇用の週の時間と日数は、まだ決まっていません。決まる前に、どこに線があるのかを知っておきたいと思いました。
定年前後の悩みを集めていると、時間の話も出てきます。再雇用になって給与の仕組みは変わったのに、働く時間は正社員のころと同じだという人。60歳で仕事を探すと、週20時間を超えない仕事ばかりで会社の保険に入れない、という人もいました。
時間と日数を変えると、変わるのは保険だけではありません。有給休暇の日数も変わります。その話は定年後の再雇用で、有給休暇はリセットされません(ただし週4日・30時間未満にすると減ります)に書きました。この記事は保険の線だけに絞って、国の資料で確かめます。
再雇用の時間は、まだ決まっていない。だから先に線を見ておく
先に、分かったことを書いておきます。
- 健康保険と厚生年金は、まず「正社員の4分の3」で見ます。ここを超えていれば、今までどおり入ります
- 4分の3を下回ったら、「週20時間」と会社の規模で決まります
- 日本年金機構のページ(2026年10月1日更新)の加入条件には、月8.8万円という賃金の条件が書かれていません
- 雇用保険は週20時間が線です。外れると、高年齢雇用継続給付の前提も崩れます
- 出社を減らす(場所の話)ことと、時間を減らす(契約の話)ことは別です
ここから、ひとつずつ資料で確かめていきます。
まず「正社員の4分の3」。ここを超えていれば、今までどおり
日本年金機構の「適用事業所と被保険者」には、こう書かれています。
- パートタイマー・アルバイトなどでも、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同じような仕事をしている通常の労働者の4分の3以上なら、健康保険・厚生年金保険の被保険者になる
- この基準は、平成28年10月1日から明確にされた
ここで気をつけたいのは、「通常の労働者」の時間は会社ごとに違うことです。「週30時間」と決まった数字があるわけではありません。正社員が週何時間・月何日働く会社なのかで、4分の3の位置が変わります。
もう1つ、時間と日数の両方が見られます。週の時間が足りていても、月の日数が4分の3に届かなければ、この線の内側には入りません。
4分の3を下回ったら「週20時間」と会社の規模で決まる
4分の3に届かない人のための線もあります。日本年金機構の「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(2026年10月1日更新)には、こう書かれています。
- 「特定適用事業所」などに勤める人で、通常の労働者の4分の3未満の人のうち、週の所定労働時間が20時間以上で、学生ではない場合は、短時間労働者として健康保険・厚生年金保険の加入対象になる
- 2か月以内の期間を定めて使用される人や、臨時に使用される人などは、加入対象から除かれる
- 特定適用事業所とは、1年のうち6か月以上、厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない)の総数が51人以上になることが見込まれる企業など
- 令和9年10月から、被保険者数が36人以上の企業などで働く短時間労働者も加入対象になる
つまり、4分の3を下回ったときに会社の保険に残れるかどうかは、週20時間以上かどうかと、勤め先が特定適用事業所に当たるかどうかの両方で決まります。
再雇用は1年ごとの契約が多いので、「2か月以内の期間」には普通は当たりません。ただ、自分の契約期間は契約書で確かめておきたいところです。
2026年10月から、年金機構の加入条件に「月8.8万円」が無い
この線について、以前は「月8.8万円」という賃金の条件がよく語られていました。
ところが、2026年10月1日に更新された日本年金機構のページで、短時間労働者の加入条件として書かれているのは、週20時間以上・学生ではないの2つだけでした。月8.8万円の条件は書かれていません。
8.8万円という数字が残っているのは、最低賃金の減額の特例許可を受けている人(特定減額特例対象者)の扱いだけです。この人たちは原則として加入対象ではなく、申し出れば加入できる、とされています。
なお、この変更を決めた法令の原文と施行日は、私はまだ国の資料で確かめられていません。ここでは「年金機構のページ(2026年10月1日更新)にはこう書かれている」という形にとどめます。世間でいう「◯◯万円の壁」という言い方も、国の資料の言葉ではないので使いません。
雇用保険は週20時間。外れると高年齢雇用継続給付も受けられない
雇用保険は、健康保険・厚生年金とは別の線です。
厚生労働省の「雇用保険制度Q&A~事業主の皆様へ~」には、雇用保険の被保険者になる条件として、次の2つが挙げられています。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
ここが、再雇用の人にとっていちばん効くところだと思います。
ハローワークの「雇用継続給付」によると、高年齢雇用継続給付は、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の一般被保険者が、60歳時点に比べて賃金が75%未満に下がった状態で働き続ける場合に支給されます。60歳時点の64%以下に下がった場合は、各月の賃金の10%相当額です(令和7年3月31日以前に60歳に達した人は15%)。
つまり、雇用保険の被保険者であることが前提です。時間を減らしすぎて週20時間を下回ると、給料が下がった分を一部補ってくれるはずの給付の前提ごと外れます。この給付のしくみは「高年齢雇用継続給付は15%」はもう古い。2025年4月以降に60歳になる人は10%ですにまとめています。
もう1つ、先の変更もあります。厚生労働省の「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要」によると、雇用保険の週の所定労働時間の線は「20時間以上」から「10時間以上」に変わります。施行は2028(令和10)年10月1日です。私が60歳から65歳になるまでの間に、この線が動くことになります。
定年前にやること:時間と日数を決める前に、確かめる3つ
資料を読んで、時間と日数を決める前に確かめることは3つに絞れました。
- 自分の会社の「通常の労働者」の週の時間と月の日数。4分の3の線の位置は、ここで決まります。就業規則で確かめられます
- 自分の会社が特定適用事業所に当たるか。4分の3を下回ったとき、週20時間の線が使えるかどうかがここで決まります
- 再雇用の契約書(労働条件通知書)に書かれる、週の所定労働時間と月の所定労働日数。保険が見るのは、実際に出社した日ではなく、契約で決めた時間と日数です
3つ目が、私にとって大事な切り分けでした。出社を減らしてリモートを増やすのは、働く場所の話です。契約の時間が変わらなければ、保険の線は動きません。逆に、「出社を減らす」のつもりで話し合っているうちに、契約の時間そのものが短くなっていたということがないように、書面で確かめたいと思います。
会社に聞くことの全体は、下の「あわせて読む」の「定年前に会社へ聞くこと7つ」にまとめてあります。保険の線は、そこに足す1つです。
ここが、私がまだ埋められていない穴です
線は分かりました。4分の3、週20時間、会社の規模、雇用保険の週20時間。
それでも、私の再雇用の時給と、週の時間・日数はまだ出ていません。時間を減らしたら、手取りがいくらになるのか。将来の年金がどう変わるのか。高年齢雇用継続給付はいくらになるのか。時給が出るまで、自分では計算できません。
保険料が減って手取りが増えるように見えても、厚生年金の積み上げや給付が止まれば、その先の収入が変わります。どちらを取るかは、数字を並べないと決められません。
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まだ分かっていないこと
- 私の再雇用の時給・週の時間・月の日数。会社の回答待ちです
- 私の会社の「通常の労働者」の時間と日数。就業規則をまだ読み比べていません
- 私の会社が特定適用事業所に当たるか。まだ確かめていません
- 月8.8万円の条件が外れたことを決めた法令の原文と施行日。国の資料ではまだ確かめていません
分かったら、書き足します。
この記事の線に、自分の週の時間を当てはめて数える書き込み表は、noteにまとめました(有料・100円)→ 週20時間を切ると、再雇用でも会社の保険の外。定年前に数えた4本の線
あわせて読む
- 退職後の健康保険は任意継続と国民健康保険のどっちが得か — 会社の健康保険から外れたら、どこへ行くのか。線を下回ったときの行き先の話です
- 定年前に会社へ聞くこと7つ — 賃金がまだ教えてもらえない時期に、何を聞いておくか。この記事の3つと合わせて使えます
まとめ
- 健康保険・厚生年金は、週の所定労働時間および月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上なら被保険者(日本年金機構)
- 4分の3の位置は会社ごとに違う。固定の時間数ではない
- 4分の3未満でも、特定適用事業所(いまは51人以上)などで週20時間以上・学生でないなら加入。令和9年10月から36人以上に広がる
- 2026年10月1日更新の年金機構のページでは、加入条件に月8.8万円の条件が書かれていない
- 雇用保険は週20時間以上・31日以上の雇用見込み。2028(令和10)年10月1日から週10時間以上に変わる
- 高年齢雇用継続給付は60歳以上65歳未満の一般被保険者が対象。雇用保険から外れると前提ごと外れる
- 出社を減らす(場所)と、時間を減らす(契約)は別。保険が見るのは契約の時間と日数
この記事で使った資料
- 日本年金機構「適用事業所と被保険者」(2026年10月1日更新) https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(2026年10月1日更新) https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html
- 厚生労働省「雇用保険制度Q&A~事業主の皆様へ~」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000140565.html
- ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_continue.html
- 厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001255172.pdf
決まりと数字は、すべてこの5つから引きました。個人の解説記事・動画・ニュースは、論点を探すためだけに使い、根拠にはしていません。