再雇用で給料が下がったのに、社会保険料は前のまま? 会社が「同日得喪」を出せば、再雇用した月から下がります

私は2027年2月に60歳になります。定年のあとは、同じ会社に再雇用で残ることが決まっています。
再雇用後の給料がいくらになるかは、まだ教えてもらっていません。以前、定年前に会社へ聞くこと7つという記事を書きましたが、そのときも賃金額は最後まで空欄のままでした。
額面が分からないなら、せめて引かれる側の仕組みだけでも先に知っておこう。そう思って調べ始めたら、ひとつ引っかかる話に行き当たりました。
「再雇用で給料が下がったのに、社会保険料はしばらく前の高い額のまま引かれた」という話です。
再雇用で給料が下がったのに、社会保険料は前のまま?
再雇用の話をしている人たちの書き込みを読んでいて、目にとまった人が3人いました(本人の言葉そのままではなく、内容を言い換えています)。
- 年収が一気に半分近くになる人。税金や保険料のことを考えると、いつ辞めるのがいいのか決めかねている、と書いていました
- 再雇用後の手取りの見込み額で、1か月暮らす練習をした人。やってみたら足りなかった、とのことでした
- 年収が大きく下がり、手元に残る給料がわずかだという人
3人とも、見ているのは額面ではなく手取りでした。1人目は、保険料をはっきり名指ししています。
手取りは、額面から税金と社会保険料を引いた残りです。額面が下がっても、引かれる保険料がすぐに下がらなければ、そのあいだ手取りはもう一段減ります。
では、社会保険料はいつ下がるのか。確かめる先は、日本年金機構の資料です。
保険料の元は「標準報酬月額」。ふつうは給料が変わってから4か月目に変わる
厚生年金と健康保険の保険料は、毎月の給料そのものではなく、標準報酬月額(給料をいくつかの幅に区切って当てはめた、計算用の月額)を元に決まります。
給料が大きく変わったときに、この標準報酬月額を途中で見直すしくみを随時改定といいます。日本年金機構の「随時改定(月額変更届)」によると、次の3つの条件にすべて当てはまったときに行われます。
- 昇給や降給などで、固定的賃金(基本給や決まった手当など、額や率が決まっている給料)に変動があった
- 変動した月から続く3か月の報酬の平均で出した標準報酬月額と、それまでの標準報酬月額との間に、2等級以上の差が出た
- その3か月の、報酬の支払いの元になった日数(支払基礎日数)が、どの月も17日以上ある(特定適用事業所で働く短時間労働者は11日)
そして、見直された額が使われ始めるのは、変更後の報酬を初めて受けた月から数えて4か月目からです。資料には例として、4月に支払われる給与に変動があった場合は7月から、と書かれています。
つまり、この流れに乗った場合、下がった給料を受け取り始めてから最初の3か月は、前の標準報酬月額のまま保険料が計算されることになります。冒頭の「しばらく前の高い額のまま」は、この3か月のことだと考えられます。
ただし、これは3つの条件に当てはまった場合の流れです。「再雇用なら例外なく3か月高いまま」という意味ではありません。
60歳以上の再雇用には「同日得喪」という手続きがある
ここからが、この記事でいちばん伝えたいところです。
日本年金機構のFAQに、まさにこの場面の問いがありました。「60歳以上の厚生年金の被保険者が退職し、継続して再雇用される場合、どのような手続きが必要ですか」。
答えはこうです。
事業主が該当する方の厚生年金保険等の被保険者資格喪失届および被保険者資格取得届を同時に年金事務所へ提出していただくことにより、再雇用された月から再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に決定することができます。 (日本年金機構 FAQ)
定年でいったん退職した形にして、被保険者の資格を失う届け(資格喪失届)と、取り直す届け(資格取得届)を同時に出す。そうすると、再雇用された月から、下がった給料に合わせた標準報酬月額になる、ということです。
同じ機構の手続きのページ(2-8)では、この扱いを「使用関係が一旦中断したものとみなし」て行う、と説明しています。
失うのと取り直すのを同じ日に行うので、世の中ではこの手続きを「同日得喪(どうじつとくそう)」と呼んでいます。ただしこれは通称で、日本年金機構の資料にこの言葉は出てきません。資料の上では、あくまで「資格喪失届と資格取得届を同時に提出する」手続きです。
さきほどの4か月目の流れと並べると、こうなります。
| 保険料が下がった給料に合わせて変わる時期 | |
|---|---|
| ふつうの見直し(随時改定・条件に当てはまった場合) | 下がった給料を初めて受けた月から数えて4か月目 |
| 喪失届と取得届を同時に出した場合 | 再雇用された月 |
対象は「60歳以上で、1日も空けずに同じ会社に再雇用される人」
使える人には条件があります。条件は2つです。
1つ目は、60歳以上であること。
以前は対象が狭く、平成25年3月までは、60歳から64歳までの厚生年金を受け取る権利のある人に限られていました。平成25年4月1日から、対象が「60歳以降に退職後継続再雇用される方全て」に広がっています(日本年金機構のお知らせ)。
FAQには、会社に定年の定めがあるかどうかは関係ないこと、正社員に限らず、パートやアルバイトでも厚生年金保険等の被保険者なら対象になることも書かれています。
2つ目は、1日も空けずに同じ会社に再雇用されること。
資料の言葉では、「退職後継続再雇用」とは「1日も空くことなく同じ会社に再雇用されること」です。
私の場合、60歳で、同じ会社に、再雇用で残ります。条件の形には当てはまります。ただ、定年退職の日と再雇用の始まる日のあいだが1日も空かないのかは、まだ確かめていません。ここは会社に聞くことに入れます。
届けを出すのは会社。本人は出せない
次に、誰がやる手続きなのか。
FAQの答えの主語は「事業主が」です。届けを年金事務所に出すのは会社で、本人が自分で出す手続きではありません。
届けには、次の書類をつけることになっています(2-8のページ)。
- 就業規則や退職辞令の写し(退職日が確かめられるもの)と、雇用契約書の写し(継続して再雇用されたことが分かるもの)
- または、退職日と再雇用された日が書かれた、事業主の証明書
事業主の証明書は、機構が様式を用意していますが、継続再雇用についての事業主の証明であれば、様式の指定はないとされています。
もう1つ、FAQには大事な一文がありました。
厚生年金基金および健康保険組合に加入している事業所の場合は、当該基金、健康保険組合にも同様の届出が必要ですのでご注意ください。 (日本年金機構 FAQ)
私の会社の健康保険は、協会けんぽではなく健康保険組合です。年金事務所への届けだけでなく、組合への届けも要るということになります。組合側の細かな扱いは組合に問い合わせるように、とも書かれています。
本人にできるのは、会社に「この手続きをしてもらえるか」を聞くことだけです。
使わないと損、とまでは言えない理由
ここは、自分に都合のいい読み方をしないように書いておきます。
1つ目。国の資料の書き方は、「決定することができます」です。「しなければならない」ではありません。出すかどうかは会社の手続きで、会社がこの届けを出す運用をとっているかどうかは、会社ごとに確かめるしかありません。
2つ目。効き目の大きさは、下がり幅によります。ふつうの随時改定には「2等級以上の差」という条件がありました。下がり幅が小さい人は、そもそも保険料の差も小さくなります。
3つ目。保険料が下がると、将来受け取る厚生年金の額との関係がどうなるのか、という論点があります。これは大事な話ですが、今回開いた国の資料には、その比較が書かれていませんでした。出典なしでは書かないと決めているので、この記事では扱いません。
言えるのは、「再雇用で給料が下がるなら、保険料もその月から合わせてもらう手続きが、国の資料に用意されている」というところまでです。
定年前にやること:会社に聞く一言
制度の側は分かりました。残りは、自分の会社の側です。私は次の3つを聞くことにしました。
- 「再雇用のとき、厚生年金と健康保険の資格喪失届と資格取得届を、同時に出してもらえますか」
- 定年退職の日と再雇用の始まる日は、1日も空きませんか
- 健康保険組合への届けはどうなりますか(健康保険組合に入っている人だけ)
聞き方も決めました。「同日得喪してもらえますか」だけだと、通称なので担当の人によっては伝わりにくいかもしれません。だから1つ目は、資料どおりの言い方にしました。「60歳以上の継続再雇用の、喪失届と取得届の同時提出」と言えば、日本年金機構のFAQの言葉そのものです。
これは、定年前に会社へ聞くこと7つに8つ目として足します。
ここが、私がまだ埋められていない穴です
ここまでで、保険料がいつ下がるかは分かりました。
それでも、私の手元には空欄が残っています。肝心の、再雇用後の給料額がまだ分からないのです。額面が分からなければ、保険料と税金を引いた手取りは出せません。保険料が再雇用の月から下がると分かっても、いくら下がるのかは計算できません。
そして、国の資料が教えてくれるのは手続きの仕組みまでです。私の手取りがいくらになるかは、1行も書いてありません。
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まだ分かっていないこと
- 私の再雇用後の給料額。まだ提示されていません
- 会社が、喪失届と取得届を同時に出す運用をとっているか
- 定年退職の日と再雇用の始まる日が、1日も空かないか
- 健康保険組合での手続きの扱い
分かったら、空欄を埋めて書きます。
あわせて読む
- 「高年齢雇用継続給付は15%」はもう古い。2025年4月以降に60歳になる人は10%です — 下がった給料を補う側の制度です。この記事は引かれる側の話でした
- 退職後の健康保険は任意継続と国民健康保険のどっちが得か。その前に、保険証の「健康保険組合」を確かめてください — 保険証の「健康保険組合」を確かめる話。組合の人は、この記事の「会社に聞く3つ」の3つ目とつながります
まとめ
- 厚生年金と健康保険の保険料は、標準報酬月額を元に決まる
- 給料が大きく変わったときの見直し(随時改定)は、3つの条件に全部当てはまったときに、変更後の報酬を初めて受けた月から数えて4か月目から(例:4月に変動→7月)
- 60歳以上で、1日も空けずに同じ会社に再雇用される場合は、会社が資格喪失届と資格取得届を同時に出すことで、再雇用された月から再雇用後の給与に応じた標準報酬月額にできる(通称「同日得喪」)
- 対象は平成25年4月1日から「60歳以降に退職後継続再雇用される方全て」。定年の定めの有無や、正社員かどうかは問わない
- 届けを出すのは会社。健康保険組合に入っている会社は、組合にも同様の届出が必要
- 国の資料は「決定することができます」。損得の比較(将来の年金額との関係)は、この記事では扱っていない
- 定年前に会社へ聞くのは、「喪失届と取得届を同時に出してもらえますか」「退職日と再雇用日は1日も空きませんか」「健康保険組合への届けはどうなりますか」
この記事で使った資料
- 日本年金機構 FAQ「60歳以上の厚生年金の被保険者が退職し、継続して再雇用される場合、どのような手続きが必要ですか。」 https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kounen/jigyonushi/20140911.html
- 日本年金機構「2-8:60歳以上の方を、退職後1日の間もなく再雇用したとき」 https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/hihokensha/keizokusaikoyou.html
- 日本年金機構「退職後継続再雇用された場合、再雇用された月から、再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に改定できる仕組みの対象者が『60歳以上の方』に変わります。(平成25年4月1日施行)」 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2013/20130226.html
- 日本年金機構「随時改定(月額変更届)」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-02.html
数字と決まりは、すべてこの4つから引きました。個人の解説記事や動画は、論点を探すためだけに使い、根拠にはしていません。冒頭で触れた3人の話も、論点を探すために読んだもので、制度の根拠にはしていません。