定年で夫が厚生年金を抜けたら、妻の国民年金はどうなる? 第3号から第1号へ、月17,920円を60歳まで

私は2027年2月に60歳になります。定年のあとは同じ会社に再雇用で残る予定です。
以前、定年で辞めるか、再雇用に残るかという記事で、2つの道を比べました。あのときの物差しは自分の収入だけでした。
ところが、定年前後の悩みを集めていると、家族の側の声がいくつも出てきます。夫が会社を辞めたら、自分で国民年金を払う側になった。払い続けるか、パートの時間を増やすかで迷っている、という声。夫が再雇用に乗るか60歳で辞めるかを、家計と年金と自分の働き方まで含めて考え始めた、という声もありました。
辞めるか残るかで、家族の年金の扱いが変わる。これは、前の記事で物差しに入れていなかったことです。今の私には妻がいないので、わが家ではこの切り替えは起きません。それでも、同じ年ごろの人から届く声の多さを見て、決まりだけは日本年金機構の資料で確かめておくことにしました。
※この記事では「夫が会社員、妻が扶養されている」形で書きます。資料の言葉は「配偶者」で、夫と妻が逆でも決まりは同じです。
夫が定年で辞めたら、妻の年金は何か変わるのか
先に、分かったことを書いておきます。
- 変わります。夫が会社を辞めて厚生年金を抜けると、妻は国民年金の第3号でなくなり、第1号に切り替わります
- 第1号になると、60歳になるまで保険料を自分で納めます(令和8年度は月17,920円)
- 夫が再雇用で厚生年金に残る間は、妻は第3号のままです
- ただし、夫が65歳になると、残っていても切り替わります
ここから、ひとつずつ資料で確かめていきます。
第3号とは「会社員に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者」
日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」では、第3号被保険者になる条件がこう示されています。
- 20歳以上60歳未満であること
- 厚生年金に加入する配偶者に扶養されていること(配偶者が65歳以上70歳未満で、老齢または退職を理由とする年金の受給権がある場合は除く)
- 原則として年収130万円未満であること
同じページには、年収130万円未満でも、本人が厚生年金の加入要件に当てはまる場合は第3号にならないとも書かれています。
そして、第3号の人は自分で保険料を納める必要がありません。日本年金機構「国民年金第3号被保険者の保険料について」によると、第2号被保険者(厚生年金に入っている人)全体で負担しているためです。
払っていないから、意識しない。多くの家庭で、ここが話題にならない理由だと思います。
夫が厚生年金を抜けると、妻は第1号に切り替える
日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」の「配偶者が行う手続き」には、こう書かれています。
国民年金第2号被保険者が退職した際、その被保険者に扶養されていた配偶者も同時に国民年金第3号被保険者の資格を喪失するので、国民年金第1号被保険者の手続きをする必要があります。 (日本年金機構)
続けて、第1号被保険者は国民年金保険料の納付が必要とあります。
「配偶者が転職・退職したときの手続き」のページでも、夫が会社を辞めて自営業者などになった場合、妻は第3号から第1号へ切り替える必要があると書かれています。手続きの先は、住んでいる市区町村の国民年金の窓口です(電子申請もできます)。
なお、妻の側の手続きの期限は、今回読んだページの配偶者の欄では確かめられませんでした。ここは数字を書かずにおきます。
第1号の保険料は月17,920円(令和8年度)。60歳になるまで
日本年金機構「国民年金保険料」によると、保険料は1か月17,920円(令和8年度)です。納付期限は、納める月の翌月末日です。
では、いつまで納めるのか。日本年金機構「第3号被保険者の配偶者が65歳になったときの手続き」には、第1号になった場合、60歳になるまで保険料を自分で納めると書かれています。
仮に、夫が辞めたとき妻が58歳なら、60歳まで2年=24か月です。
17,920円 × 24か月 = 430,080円
これは令和8年度の額で計算した目安です。保険料は年度ごとに変わります。特定の家の数字ではありません。
もう1つ、「国民年金保険料」のページに書かれていることがあります。納めた国民年金保険料は、所得税や住民税の計算で全額が社会保険料控除の対象です。
払った分は、65歳からの基礎年金に入る
払った保険料はどこへ行くのか。日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」(5ページ)の、老齢基礎年金の計算式に入ります。
老齢基礎年金 = 847,300円 ×(保険料納付済月数 + 免除月数の調整分)÷ 480月
847,300円は令和8年度の満額です。
仮に24か月を納めると、式どおりで 847,300円 × 24 ÷ 480 = 年42,365円が、この式に入る計算になります(式どおりの目安です)。
ここで大事なのは、第3号の期間も年金額に反映されることです。老齢年金ガイド(3ページ)では、第3号被保険者になった期間は資格期間の④に数えられていて、年金額に反映されない期間(納付猶予や合算対象期間)には入っていません。
つまり、第3号のままなら払わずに入っていた月数を、切り替わると今度は自分で払って入れる、という関係です。
払ったほうが得か損かは、書きません。受け取る年数で変わりますし、国の資料に損得の記述はありません。
再雇用で夫が厚生年金に残る間は、妻は第3号のまま
日本年金機構「配偶者が転職・退職したときの手続き」には、夫が転職して引き続き厚生年金の事業所に勤める場合、妻は条件を満たせば引き続き第3号に当たり、手続きは不要と書かれています。
これを再雇用に当てはめると、夫が再雇用で厚生年金に入り続けるなら、定年の日に妻の側で切り替えは起きない、ということです。
ただし、再雇用で勤務時間や日数が減り、夫が厚生年金から外れる場合は話が別です。夫が第2号でなくなるので、妻も第3号でなくなります。再雇用の条件で厚生年金に入り続けるかは、会社に確かめる必要があります。
ただし夫が65歳になると、残っていても切り替わる
ここを見落としそうになりました。
日本年金機構「第3号被保険者の配偶者(厚生年金等の加入者)が65歳になったときの手続き」によると、第2号被保険者は「65歳未満の人、および65歳以上70歳未満で老齢基礎年金の受給資格を満たしていない人」と定められています。
そのため、夫が65歳に到達(誕生日の前日)して老齢基礎年金の受給権を満たすと、夫は第2号でなくなり、妻も第3号でなくなります。妻がそのとき60歳未満なら、第1号への切り替えの手続きが要ります。手続きは、住んでいる市区町村の国民年金の窓口、年金事務所、またはマイナポータルの電子申請です。
「再雇用で残れば安心」で止めてはいけない、ということです。夫が65歳になる日が、もう1つの切り替わる日です。
定年前にやること:家族の年齢を並べて、切り替わる日を先に書き出す
資料を読んで、やることは4つに絞れました。
- 配偶者の生年月日から、「60歳になる日」を出す
- 自分が厚生年金を抜ける日を並べる。60歳で辞める日/再雇用が終わる日/65歳になる日のうち、いちばん早いもの
- 1より2が先なら、その差の月数が「配偶者が自分で納める期間」になる
- 再雇用の条件で厚生年金に入り続けるかを、会社に確かめる
4つ目は、再雇用の条件を受け取ったら必ず見る欄です。私の条件は、再雇用のあとも厚生年金に入り続ける形でした。
決まりは分かった。家計にどちらがよいかは、資料に書いていない
決まりは分かりました。辞めれば切り替わる。残る間は切り替わらない。65歳で切り替わる。ここまでは国の資料ではっきりしています。
それでも、切り替わったあとに国民年金を払い続けるのか、パートの時間を増やすのかは、どの資料にも書いてありません。
冒頭の声のとおり、これは年金だけでなく家計全体の話になります。国の資料が教えてくれるのは切り替わる日と保険料までで、どちらがよいかは家ごとの数字で変わります。
【PR】「夫婦2人の収入と年金を並べて、定年後の家計の見通しを立てる」という作業は、資料を読むだけでは終わりません。お金の見通しを外の人に一度見てもらうのも、手段の一つだと思っています。ただし、相談したからといって保険料が減るわけでも、どちらが正解か決まるわけでもありません。私はまだ使っていません。使ったら、実測としてここに書きます。※リンク先は、保険の見直しを中心にした無料相談です(1〜2時間の面談があります)。
「未来への安心を、今ここで。無料FP相談でハーゲンダッツギフト券をゲット!」
![]()
まだ分かっていないこと
- 妻の側の手続きの期限。今回読んだページの配偶者の欄では確かめられませんでした
- 払うのと、働き方を変えるのと、どちらが家計に合うか。家ごとの数字で変わり、国の資料には書かれていません
分かったら、書き足します。
あわせて読む
- 60歳から再雇用で払う厚生年金は、65歳からの年金を増やすのか — 基礎年金が「20歳から60歳の480月」で決まる話です。この記事の42,365円と同じ式を使っています
- 退職後の健康保険は3択 — 年金の第3号とは別に、健康保険の扶養にも線があります。辞めたあとに家族の保険をどうするか、もう1つの分かれ目です
まとめ
- 第3号は、厚生年金に入る配偶者に扶養されている20歳以上60歳未満の人(原則年収130万円未満)。自分で保険料を納めなくてよい
- 夫が退職して厚生年金を抜けると、妻は同時に第3号でなくなり、第1号の手続きが要る。第1号は保険料の納付が必要
- 保険料は月17,920円(令和8年度)。60歳になるまで自分で納める。仮に24か月なら430,080円(令和8年度の額で計算した目安)
- 納めた分は老齢基礎年金の式(847,300円×月数÷480、令和8年度)に入る。第3号の期間も年金額に反映されるので、切り替わると同じ月数を自分で払って入れることになる
- 夫が再雇用で厚生年金に残る間は、妻は第3号のまま
- ただし夫が65歳になって受給権を満たすと、残っていても妻は第3号でなくなる
- 定年前に、配偶者が60歳になる日と、自分が厚生年金を抜ける日を並べて書き出す
- 払うのと働き方を変えるのとの損得は、国の資料には書かれていない
この記事で使った資料
- 日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20140710-04.html
- 日本年金機構「国民年金第3号被保険者の保険料について」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/sango.html
- 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20140710-03.html
- 日本年金機構「配偶者が転職・退職したときの手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20120712.html
- 日本年金機構「第3号被保険者の配偶者(厚生年金等の加入者)が65歳になったときの手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20150119.html
- 日本年金機構「国民年金保険料」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/hokenryo.html
- 日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」(3・5ページ) https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03.pdf
数字と決まりは、すべてこの7つから引きました。計算例の430,080円と42,365円は、資料の額と式に仮の数字を入れて私が計算したものです。個人の解説記事や動画は、論点を探すためだけに使い、根拠にはしていません。