役職定年の実測ノート

役職定年で何が起きるかを、実測の数字と当事者の一次情報で。

再雇用で給料は下がるのに仕事は同じ。会社に説明を求められます(2026年10月1日、定年後の待遇の見方が変わりました)

給料は下がるのに仕事は同じ。10月1日。会社に説明を求められます。2026年10月1日、定年後の待遇の見方が変わった

「給料は下がるのに、仕事はまったく同じ」

定年後の再雇用について集めている悩みの中で、いちばん多かったのがこの形でした。

言い方は人によって違います。「3割近く下がるのに、業務の中身も範囲も変わらないと言われた」。「同じ職場の契約社員より、再雇用の自分のほうが時給が低い」。「給料は下がったのに、休んでいる人のぶんの仕事まで回ってきた」。「役職はそのままなのに、役職手当だけが無くなった」。4人が、同じところで引っかかっていました。

私は2027年2月に60歳になります。再雇用は決まっていますが、条件の提示はまだ受けていません。

だから今のうちに、提示を受けたときに何ができるのかだけを、国の資料で調べました。

この記事は、裁判の話ではありません。裁判の前に、国が用意している道具が2つある、という話です。そしてその道具の効き方が、2026年10月1日に変わりました。

いちばん多い「納得できない」は、下がったのに仕事が減らない、でした

ネットで「再雇用 給料 下がる 違法」と調べると、出てくる記事のほとんどが裁判例の紹介で終わります。

読んでも、明日の自分が何をすればいいのかは分かりませんでした。

私が知りたかったのは、条件を提示されたその場で、何を言っていいのかです。

先に、この記事の順番を書いておきます。

  1. 自分がどの法律の対象なのかを見る
  2. 「定年後だから下がって当たり前」なのかを確かめる
  3. 10月1日に何が変わったのかを見る
  4. 会社に説明を求める
  5. それでも折り合わないときの窓口

なお「定年前に会社へ何を聞いておくか」は、定年前に会社へ聞くこと7つにまとめてあります。この記事は、その「聞く」に法律の裏づけがあった、という続きです。

まず、自分がどの箱に入るのかを見ます。有期契約かどうかで、使える法律が変わります

この記事で使う法律は「パートタイム・有期雇用労働法」(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)です。

対象は、短時間労働者か有期雇用労働者です。再雇用が「1年ごとの契約を更新していく」形なら、有期雇用労働者に入ります。

一方で、フルタイムで、期間の定めのない契約の場合は、この法律の対象ではありません。

所定労働時間が通常の労働者と同一であり、かつ、事業主と期間の定めのない労働契約を締結している労働者については、短時間・有期雇用労働法(中略)に規定する短時間・有期雇用労働者に該当しないが、次の事項に留意する必要がある。 (同一労働同一賃金ガイドライン 第6)

ただし、その場合も放っておかれるわけではありません。同じ箇所に、こう続きます。

労働契約法第3条第2項の規定により、労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとされていること。 均衡の考慮に当たっては、この指針の趣旨が考慮されるべきであること。 (同上)

だから最初にやることは、雇用契約書を見ることです。「契約期間」の欄に期間が書いてあるかどうか。ここで、この先の話がどちらの側になるかが決まります。

私自身は、まだ確かめていません。再雇用後の契約が有期になるのか、無期になるのか。提示を受けたら、ここから見ます。

「定年後だから下がって当たり前」ではありません

定年後の再雇用について、ガイドラインには専用の項目があります。

定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者についても、短時間・有期雇用労働法の適用を受けるものである。 (同一労働同一賃金ガイドライン 第3(注)2)

まず、ここで大事なことを1つ書きます。自分に不利な側の話です。

実際に両者の間に職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情の相違がある場合は、その相違に応じた待遇の相違は許容される。 (同上)

仕事の中身や、異動・配置の範囲に実際の違いがあれば、その違いに応じた差は認められます。再雇用で給料が下がること自体が、ただちに問題になるわけではありません。

そのうえで、同じ項目はこう締めくくっています。

当該有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることのみをもって、直ちに通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理ではないと認められるものではない。 (同上)

「定年後の再雇用だから」という理由だけでは、差があってよいことにはならない。

この一文は、改正前のガイドラインにもすでに書いてあります。10月1日に変わったのは、その手前の部分です。

2026年10月1日、見方が「賃金ひとまとめ」から「待遇ひとつずつ」に変わりました

厚生労働省は、同一労働同一賃金ガイドラインの改正を令和8年(2026年)4月28日に公布し、同年10月1日から適用すると公表しています。

この改正は、2026年10月1日から適用されています。私の条件提示は、改正後になります。

新旧対照表で、定年後の再雇用の項目を見比べました。変わったのは次の2か所です。

1か所目:「賃金」が「待遇」になった

改正前:その相違に応じた賃金の相違は許容される。 改正後:その相違に応じた待遇の相違は許容される。

2か所目:「それぞれの待遇について」が入った

改正前:定年に達した後に有期雇用労働者として継続雇用する場合の待遇について、様々な事情が総合的に考慮されて(後略) 改正後:定年に達した後に有期雇用労働者として継続雇用する場合のそれぞれの待遇について、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められる様々な事情が総合的に考慮されて(後略) (厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン 新旧対照表)

平たく言うと、「給料全体でいくら下がったか」ではなく、「この手当は何のために払っているのか。それに照らして差は妥当か」を、手当ひとつずつ見る、ということです。

基本給、賞与、役職手当、通勤手当。それぞれに、払う目的があります。その目的に照らして、差の理由を見る。これが改正後の見方です。

役職名が残るのに役職手当だけ消える、は「問題となる例」に書いてあります

読者の声の中に「役職はそのままなのに、役職手当だけが無くなった」というものがありました。

ガイドラインには、役職手当の項目があります。

役職手当であって、役職の内容に対して支給するものについて、通常の労働者と同一の内容の役職に就く短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の役職手当を支給しなければならない。 (同一労働同一賃金ガイドライン 第3-4(1))

そして「問題となる例」として、こう書いてあります。

通常の労働者であるXの役職と同一の役職名であって同一の内容の役職に就く有期雇用労働者であるYに、Xに比べ役職手当を低く支給している。 (同上)

ただし、ここも自分に不利な側を書きます。同じ項目に、次の一文があります。

役職の内容に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた役職手当を支給しなければならない。 (同上)

つまり、役職名が同じでも、役職の中身が変わっていれば、その違いに応じて下がることはありえます。見るべきは名前ではなく、役職の中身が本当に同じかどうかです。

私の会社で、再雇用後の役職名と役職手当がどう扱われるのかは、まだ確かめていません。

定年前にやること。条件を提示されたら、はんこの前に説明を求める

ここからが、この記事でいちばん伝えたいところです。

パートタイム・有期雇用労働法 第14条には、こう書いてあります。

事業主は、その雇用するパートタイム・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該パートタイム・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びにその待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明しなければならない。 (厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法のあらまし」第14条のポイント)

求めれば、会社は「差の中身」と「差の理由」を説明しなければなりません。

説明のしかたについても、厚生労働省はこう書いています。

資料(就業規則や賃金表等)を活用しながら口頭で説明することが基本です。 (厚生労働省「多様な働き方の実現応援サイト」)

そして、多くの人がいちばん気にするところ。聞いたら、心証が悪くなるのではないか。これについては、法律が先に答えを書いています。

事業主は、パートタイム・有期雇用労働者が(中略)求めをしたことを理由として、そのパートタイム・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。 (同 あらまし 第14条のポイント)

「説明を求めた」ことを理由に、不利に扱ってはいけない。

私が提示を受けたら、はんこを押す前に、この説明を求めるつもりです。

「十分な説明がなかった」こと自体が、あとで効きます(2026年10月1日 新設)

10月1日の改正で、もう1つ大事な注が新しく入りました。新旧対照表の改正前の欄は「(新設)」になっています。

事業主が短時間・有期雇用労働法第14条第2項の規定に基づき通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の待遇の相違の内容及び理由について十分な説明を行わなかったと認められる場合や、事業主が待遇の体系に係る議論において短時間・有期雇用労働者の意向を十分に考慮せず一方的に短時間・有期雇用労働者の待遇を決定した場合には、当該事実も短時間・有期雇用労働法第8条におけるその他の事情に含まれ、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められることを基礎付ける事情として考慮されうる。 (同一労働同一賃金ガイドライン 第3(注)1)

長いので、平たく書きます。

説明を求めたのに十分な説明がなかったこと、意向を聞かずに一方的に決められたこと。その事実そのものが、「その差は不合理だ」と判断される材料の1つになりうる。

「なりうる」です。そうなると決まっているわけではありません。それでも、ここから言えることがあります。

説明を求めた日付と、返ってきた答えを書き留めておくこと。

お金もかからず、定年前の今からでも準備できる、いちばん安い備えだと私は思っています。

それでも折り合わないとき。都道府県労働局に、無料・非公開の窓口があります

説明を受けても納得できない。そのときの窓口も、法律に書いてあります。

都道府県労働局長は、紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。 (厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法のあらまし」第24条のポイント)

ここでも、援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いは禁止されています(同上)。

労働局長の援助で解決しない場合は、均衡待遇調停会議で、調停委員による調停を利用することもできます(同上)。

厚生労働省の案内では、この手続きは無料・非公開です(厚生労働省「多様な働き方の実現応援サイト」)。

ただし、強制ではありません。

援助等を受けるか否か、また、(中略)助言や調停案を受諾するか否かは、パートタイム・有期雇用労働者及び事業主の任意です。 (同 あらまし)

会社側にも、受け入れない自由があります。窓口に行けば解決する、とは言えません。それでも、裁判の前に使える場所があることは、知っておいて損はないと思いました。

ここが、私がまだ埋められていない穴です

ここまでで、手続きの道具は分かりました。

  • 自分が有期か無期かを見る
  • 手当ひとつずつ、差の理由を見る
  • はんこの前に、説明を求める
  • 求めた日付と答えを書き留める
  • 折り合わなければ、労働局の窓口がある

ですが、「提示された金額で、この先の暮らしが回るのか」は、ここまでの資料には1行も書いてありません。

説明を受けて、差の理由に納得したとしても、その金額で生活が成り立つかどうかは、別の問題です。そして私はまだ提示を受けていないので、自分の答えを持っていません。

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まだ分かっていないこと

  • 私の再雇用後の契約が、有期になるのか、フルタイムで無期になるのか。確かめていません
  • 条件の提示が、いつ・どういう形で来るのか。まだ受けていません
  • 再雇用後の役職名と役職手当の扱い。確かめていません
  • 「その相違に応じた差」が、いくらなら妥当なのか。国の資料には、一律の目安は書いてありません。「◯割までなら大丈夫」という数字は、どこにもありませんでした

提示を受けたら、実際に説明を求めて、どう返ってきたかを実測として書きます。

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まとめ

  • 再雇用が有期契約なら、パートタイム・有期雇用労働法の対象。フルタイム無期なら対象外だが、労働契約法第3条第2項で均衡を考慮すべきとされる。まず雇用契約書を見る
  • 定年後の再雇用であることだけを理由に、差があってよいことにはならない
  • ただし、仕事の中身などに実際の違いがあれば、その違いに応じた差は認められる
  • 2026年10月1日から、定年後の待遇は「賃金ひとまとめ」ではなく「それぞれの待遇」の目的に照らして見る
  • 同じ役職名・同じ中身の役職なら、同じ役職手当。中身に違いがあれば、その違いに応じた額
  • 求めれば、会社は差の中身と理由を説明しなければならない(第14条第2項)。求めたことを理由とする不利益な取扱いは禁止
  • 10月1日から、十分な説明をしなかったこと自体が、不合理と判断される材料になりうる。求めた日付と答えを書き留める
  • 折り合わなければ、都道府県労働局の援助と調停(無料・非公開)。ただし受け入れるかは双方の任意

この記事で使った資料

決まりはすべて、この5つから引きました。裁判例や個人の解説記事は、論点を探すためだけに使い、根拠にはしていません。