64歳11か月で辞めると失業保険はどう変わる? 65歳の前と後で「150日分」と「50日分」に分かれる線を国の資料で確かめました

私は2027年2月に60歳で定年を迎えます。定年のあとは、同じ会社に再雇用で残ることが決まっています。
再雇用には終わりがあります。65歳まで働いて辞めるのか、その少し前に辞めるのか。64歳11か月で辞めるのが、私の第一候補です。まだ決めてはいません。
なぜその月なのか。「65歳になる前に辞めると、失業保険が違う」と聞いたからです。ただ、何がどう違うのか、何日分なのか、年金とぶつからないのか、自分から辞めると何が起きるのかが、一か所にまとまっていませんでした。
60歳で辞める側のことは、定年で辞めるか、再雇用に残るかで並べました。この記事は、その5年後の出口の話です。国の資料だけを開いて確かめました。
65歳の前と後で、もらえる物の種類が変わる
ハローワークの「基本手当について」によると、雇用保険の被保険者が辞めて失業したときにもらう物は、65歳の前と後で名前が変わります。
| 辞めたとき | もらう物 |
|---|---|
| 65歳になる前(一般の被保険者) | 基本手当(いわゆる失業保険) |
| 65歳以上(高年齢被保険者) | 高年齢求職者給付金 |
どちらも、仕事を探す人のための物です。ハローワークのページでは、基本手当を受けられる「失業の状態」を、ハローワークで求職の申し込みをし、就職しようとする積極的な意思と、いつでも就職できる能力があるのに、職業に就けない状態、としています。
そして、「定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき」は基本手当を受けられない、とはっきり書かれています。もらうために辞める、という話ではありません。辞めたあと、すぐ働く気があって仕事を探す人のための制度です。私もそのつもりで読みました。
何日分違うのか:65歳になる前は「150日分」、65歳以上は「50日分」
65歳になる前に辞めた場合:被保険者期間20年以上で150日
ハローワークの「基本手当の所定給付日数」によると、倒産・解雇などではなく自分の都合で辞めた人(特定受給資格者・就職困難者以外の離職者)の日数は、年齢に関係なく、被保険者であった期間だけで決まります。
| 被保険者であった期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 1年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
私は「120日」だと思い込んでいました。資料の表を見ると、20年以上なら150日です。ただし、この「被保険者であった期間」の数え方には注意があります(下の「窓口で確かめること」に書きます)。
基本手当の日額には上限があります。ハローワークの「基本手当について」によると、60歳以上65歳未満の上限は7,830円(令和8年8月1日現在)です。
受け取れる期間は、離職した日の翌日から原則1年間です。この1年を過ぎると、日数が残っていても受け取れません(厚生労働省のQ&A Q11も同じ答えです)。
65歳以上で辞めた場合:被保険者期間1年以上で50日分
ハローワークの「基本手当について」によると、65歳以上の被保険者(高年齢被保険者)が失業した場合は、基本手当ではなく高年齢求職者給付金になります。
| 被保険者であった期間 | 高年齢求職者給付金の額 |
|---|---|
| 1年以上 | 基本手当日額の50日分 |
| 1年未満 | 基本手当日額の30日分 |
失業の認定は1回限りで、その日に支給が決まります。受けるには、離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あることが要件です。
150日と50日。ここが、「65歳になる前に辞めると違う」と言われる理由です。
ここで1つ、書かないことがあります。それぞれ何円になるかは、この記事では計算しません。65歳以上の人の基本手当日額の上限を、今回の資料で確かめていないからです。比べるのは日数だけにします。
年金とぶつからないか:止まるのは「65歳になるまでの年金」
「失業保険をもらうと年金が止まる」という話があります。日本年金機構の「年金と雇用保険の失業給付との調整」を読むと、止まるのは特別支給の老齢厚生年金などの、65歳になるまでの老齢年金です。
- この年金と雇用保険の失業給付は、同時には受けられません
- ハローワークで求職の申し込みをした日の属する月の翌月から、失業給付の受給期間が過ぎた月(または所定給付日数を受け終わった月)まで、年金が全額支給停止されます
では、特別支給の老齢厚生年金とは誰がもらえる物か。日本年金機構の「特別支給の老齢厚生年金」によると、男性は昭和36年4月1日以前に生まれた人(女性は昭和41年4月1日以前)です。
私は2027年2月に60歳なので、昭和36年4月1日より後の生まれです。特別支給の老齢厚生年金は対象外。繰上げを選ばなければ、65歳になるまでに受け取る老齢年金はありません。この調整は私には関係しない、と読みました。
繰上げ受給を考えている人は別です。資料は「特別支給の老齢厚生年金などの65歳になるまでの老齢年金」と書いていて、繰り上げた年金がどう扱われるかまでは、このページでは読み取れませんでした。繰上げを考えている人は、年金事務所で確かめてください。
65歳以後の年金と高年齢求職者給付金については、今回の資料で確かめられたのは「調整の対象は65歳になるまでの年金」というところまでです。それ以上は書きません。
自分から辞めると「1か月」受け取れない期間がある
64歳11か月で辞めるのは、自分で決めて辞めることです。離職理由をどう扱うかはハローワークが判断しますが、自分の都合で辞めた扱いになると、給付制限があります。
厚生労働省のQ&A(Q20)によると、
- 受給手続きをした日から原則7日経過した日の翌日から、1か月間は基本手当を受けられない(これが給付制限)
- 退職日が令和7年(2025年)4月1日以降なら原則1か月。同年3月31日以前は原則2か月
- 退職日からさかのぼって5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合退職をして受給資格決定を受けた場合は3か月
「2か月」と覚えている人は多いと思います。2025年4月以降に辞める人は、原則1か月です。私が辞めるのはそれより後なので、1か月のほうです。
受け取れる期間は離職の翌日から1年なので、1か月の給付制限があっても、150日分を受け取る時間は残ります。ただし、辞めてすぐ受給手続きに行かないと、この1年を自分で削ることになります。
窓口で確かめること3つ
ここまでは資料で確かめました。資料だけでは決まらないことが3つあります。
1. 被保険者であった期間の数え方
150日になるのは「被保険者であった期間20年以上」の人です。厚生労働省のQ&Aには、過去に基本手当(再就職手当などを含む)や特例一時金を受けたことがある人は、その後の被保険者であった期間だけで数える、と書かれています。会社に入ってからの年数がそのまま20年とは限りません。自分が何年で数えられるかは、ハローワークで確かめます。
2. 「65歳になる前」の正確な日
「64歳11か月」と書いてきましたが、法律上の年齢の数え方は、今回の資料では文言を確かめられませんでした。誕生日の何日前までに辞めればよいかは、この記事では書きません。ハローワークで、自分の生年月日を見せて確かめます。
3. 会社に辞める申し出をいつまでにするか
再雇用の契約は1年ごとの会社が多いと思います。契約の途中で辞めるなら、いつまでに会社へ申し出るのかは、会社の就業規則と契約書の話です。国の資料には書いてありません。これは会社に聞くことです。
私の場合、まだ分からないこと
私の再雇用は、まだ始まっていません。契約の切れ目が1年ごとなのか、65歳の誕生日までなのか、まだ分かりません。「64歳11か月」が契約の途中なのか、切れ目に重なるのかで、3つ目の確かめ方が変わります。
そして、失業保険の日数が分かっても、65歳から先の家計の見通しは、それだけでは埋まりません。150日分を受け取ったあとは、年金で暮らすことになります。年金だけで足りるのかは、失業保険の資料には書いていないからです。
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あわせて読む
- 「高年齢雇用継続給付は15%」はもう古い — 65歳まで働く間に受け取る給付の話です。辞める時期を決める前に、いくら受け取っているかを見るために
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まとめ
- 失業したときにもらう物は、65歳になる前は基本手当、65歳以上は高年齢求職者給付金
- 自分の都合で辞めた人の基本手当は、被保険者期間20年以上で150日(10年以上20年未満120日、1年以上10年未満90日)
- 高年齢求職者給付金は、被保険者期間1年以上で基本手当日額の50日分(1年未満30日分)。失業の認定は1回限り
- 基本手当日額の上限は60歳以上65歳未満で7,830円(令和8年8月1日現在)。受け取れる期間は離職の翌日から原則1年
- 止まるのは65歳になるまでの老齢年金(特別支給の老齢厚生年金など)。男性は昭和36年4月1日以前生まれが対象で、私は対象外
- 自分の都合で辞めた扱いなら、7日の後に原則1か月の給付制限(退職日が2025年4月1日以降の場合)
- 被保険者期間の数え方と65歳になる前の正確な日はハローワークで、辞める申し出の期限は会社で確かめる
この記事で使った資料
- ハローワーク インターネットサービス「基本手当の所定給付日数」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
- ハローワーク インターネットサービス「基本手当について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
- 厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)」(Q11・Q20・※1) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html
- 日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/koyou-chosei/20140421-03.html
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20140421-02.html
決まりと数字は、すべてこの5つの資料から引きました。個人の解説記事・動画・ニュースは、論点を探すためだけに使い、根拠にはしていません。